ソープランドと遊郭を一緒くたにして話している人がいるが
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そもそも、似ているようで別物である。赤線地帯や湯屋をソープランドと絡めて話すならわかるが。
ラブドールを人造美女とするのは、そりゃ、一部の人形の従順な性格、人形の反逆性を求めない人には成功例なのかもしれんが、そもそも、あれはただの人形であって本書で語られているような「自律型」人造美女ではない。
あんたがラブドール好きだからといって、なんで一々ラブドールについて話す必要性があるのかわからない。また別の所で話すかもしれないというのに。
単に今回文学やアニメを土台に話しているせいで語れる場所がなかっただけかもしれないのに。
ラブドールを知らんのか
★☆☆☆☆
いや驚きである。本書が出た2006年には、オリエント工業を始めとして精巧なラブドールが製造され、秋葉原にはレンタルルームすらできていたというのに、これにはまったく触れていない。大学の先生たちが書いた本だからしょうがないかというと、現代のマンガやアニメからバービー人形に関する考察まであるのに、ラブドールを無視して、SFに出てくる性欲処理人形の話なんかしている。先端的で異端的であるつもりの人が、時に激しく周縁文化を排除するという好例で、そのありさまは遊女だの遊廓だのの礼賛を繰り広げつつソープランドを決して論じない人々とパラレルをなしている。人造美女は君らが無視している世界に既に存在しているのだよ。
装丁に反したまともな文学研究書
★★★★★
扱っているものがマラルメやジュール・ヴェルヌ、ポオにナボコフといったガチガチの面々から綾波レイに攻殻機動隊、ローゼンメイデンともうめちゃくちゃ範囲が広い。それだけに人はすごく選ぶだろうが、おもしろい人にはすごくおもしろい本だと思う。自分自身「ロマン主義芸術に登場する倒錯的な女性美と現代の二次元文化の共通点を探っていったらおもしろいだろうな」とは思っていたが、まさかそれがこんなにも早く、こんなにも豪華メンバーで実現されるとは思いもよらなかった。
それ以前の話で、退任なさる立仙順朗教授はこの本を書くためにわざわざアリプロを聞き、攻殻を見、アキバにも踏み込んだとか。マラルメ研究者にそこまでされると、我々ヲタクの側がありがたすぎて恐縮してしまいそうだ。そしてきちんとそれを分析し本にしてしまったことに対しては、もう敬意を表するしかない。
本書の最大の目玉は、アリプロの宝野アリカ女史が参加していることだろう。彼女のゴスロリ少女論はほとんど自分の思っているところと共通していてなんだか安心した。
可能です!
★★★★★
まず、色鮮やかで繊細な表紙がとても素敵です。
工学技術が発展し人工生命が注目されているこの世の中で、「人造美女」に焦点を当てて多方面の分野からその問題を論じるという大変興味深い内容になっています。
「人造美女」とは、人々の理想が作り出した架空の存在であるかもしれないし、実在の美女に対して周りの者が多種多様なイメージを被せて新たに作り出す像かもしれないし、どちらにしても、そもそも人間自体も「人造」になりうるのだという視点が面白かったです。