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片岡義男 短編小説集「青年の完璧な幸福」 (SWITCH LIBRARY)

価格: ¥2,484
カテゴリ: 単行本
ブランド: スイッチパブリッシング
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小説を書こうとしている人は、その人じたいが小説 ★★★★★
 高校、大学時代に、角川文庫の片岡義男フェアで著者と出逢った者にとって、久々の再会は、「片岡義男ってこんなに付箋貼らせるような作家だっけ?」という違和感だった。気になる言葉、文脈が点在している。こんなにロジックな小説論を持った人だとは、正直、当時は気がつかなかった。多分、文体から受ける印象自体は変わっていないと思う。清潔で明るくてピュアでシンプル。屈折や矛盾がなくて、日本文学的な要素が一切削ぎ落とされている。当時は、その日本文学らしくないところを軽く見ていたところがあって。まぁ、短かくて読みやすい、ビジュアルが浮かぶ、音楽が聴こえてくる、車、バイク、南の島、きれいな女の人...ってなディテールが広告の時代、80年代初頭とリンクしてたってのはあると思うけど。
  この連作短編集、「小説を書く人、あるいは、これから書こうとしている人などは、その人じたいが小説なのではないか」という仮説から出発しているってことで、小説でもあり小説論としても読めるんだよね。僕は、4作中、最初の3作は主人公は一緒だと勘違いしたまま読み終えてしまった。自分と4人の主人公とは違うって片岡義男はあとがきに書いているけれど、僕が主人公3人を同一人物だと見誤ってしまう位には、片岡義男と主人公たちは似ているはずだ。「小説を書く人、あるいは、これから書こうとしている人」に対して、片岡義男は、「いまの僕なら、きみは幸せだ、と言いたい」って想いで、「青年の完璧な幸福」って題名を付けたらしい。小説の中には、まだ世間的には何者でもない若者を、周りの大人たちが一種、過大評価するようなくだりが多く出てくるんだけど、それこそが大人の役割っていうか、若者にとっては希望っていうか。「小説を書こうとしている人は、その人じたいが小説」ってのは、「人生を思うこと自体が人生」とか「希望を持つこと自体が希望」とか、読みかえることが出来るよね。