狂気
★★★☆☆
長編だけど面白くて、一気に読み切った、古き良きテレビの世界
伝説の敏腕プロデューサーギョロナベさんの仕事、交友関係、女…
徹底的にワガママを貫いて一つの仕事に取り組むって、大切な事なの?
わがままをつき通した男の生き様
★★★★★
テレビ界の創成期に大活躍したTBSの大物プロデューサーの渡辺正文を主人公にした伝記的小説。小さい頃からわがままに育った正文は、成長しても食事、女などすべてに関して自分の好きなものを好きな時に好きなだけ手に入れないと気がすまない性格だ。
そんな正文が一生をわがままを通して手がけたのがテレビ番組・イベントのプロデュースだ。叔父の吉田秀雄(電通社長)から言われた言葉「徹底的にわがままを貫いて一つの仕事に取り組むんだ。そうすれば、お前の仕事は狂気をはらむようになる。芸術になる。そこまでやれ。」を一生貫く。そして東京音楽祭など正文でないと出来ない仕事を成し遂げていく。
この男の生き方は尋常ではない。世間の常識からかけ離れすぎている。ただ、テレビという非日常的な「祭り」の世界ではこのような人間が必要なのだろう。そして正文を取り巻く女達も尋常ではないいい女ばかりだ。このような人生を生きた男を読んで、感嘆と嫉妬を感じた。
一気読了。
★★★☆☆
テレビの黎明期に興味があったので一気読了。あくまでも小説であるという前提で面白かったです。文章が平坦で人物に深みやリアリティーが感じられないのが残念。雲の上でやりまくってるイメージ。沢たまきのエピソードなどはグー。同じ題材で佐野眞一が書いてほしい。
小説の形を取っているが,これを小説と言って良いのか
★☆☆☆☆
直木賞作家に,素人が言うのは,烏滸がましいが、
これは小説と呼んで良いものなのか。
ハリーベラフォンテは主人公ギョロナベに「感動した」と,
書いてあるが「感動した」と書かないで,
感動したことを伝える文章力が
小説家にはあるのではないか。
田邊昭知はギョロナベと「仲直りした」とあるが,なぜ
「仲直りした」か読む人が納得できるように書けるのが
小説家なのではないか。
なかにしさんの著作を読むのは初めてだか,本作は
小説家としての価値を低からしめるのではないか。
本作だけ書き殴ってしまったのだろうか。
少なくとも私は,なかにしさんの他の作品に手をだす動機を失った。
それにしても,音楽業界というのは見栄と醜さで出来上がっているものだ。
それをさも豪傑伝のように書くのは,文学性がちっとも伴っていないだけに
嫌悪感をいだくのみである。
創造と享楽
★★★★★
50年代のテレビ黎明期から、60年代、70年代の高度成長時代のエンターテイメント界を、疾風の如く駆け抜けたtbsの名物プロデューサー渡辺正文氏。物語は作詞家、音楽プロデューサーとして同時代を生きたなかにし礼氏による渡辺へのオマージュとして展開される。
主人公渡辺をメタファーとして、創造と享楽の表裏一体性を鋭く抉りつつも、根底にはデカダンスとそれに内在するダンディズムに対する作者の強烈な憧れ、畏怖、絶望が読み取れる。
女性による救済を創造の泉とし、自らの王国を作り上げる様はまさにバイロイトに君臨したワーグナーそのものだ。
ワーグナーに心酔し、最後には決別したニーチェの言葉を思い出させる。
「彼は人間ではない、病だ。」