文珍師匠の巧みな言葉のセンスを味わう
★★★★☆
上方の落語家の桂文珍が新聞に連載したエッセイを、本としてまとめたもの。
テーマは様々。仕事で各地を旅行した時のエピソード。関東と関西。寄席や落語のこと。先輩や弟子のこと。初めての舞台出演。TVドラマに出演した時のこと。健康。お酒。趣味の飛行機操縦。相撲。日本の古典芸能。ゴルフ。バイク。乗馬。家族。着物。地震による被災。その時々の世間の話題。なかなか好奇心旺盛で多趣味な人である。
ひとつひとつの話しは他愛のないものが多いのだが、いかにもベテランの落語家らしく、そこかしこにユーモアを散りばめた軽妙な語り口が光る。ちょっと微妙な話題でも巧みに笑いに包み込み、さらりと読ませる。細やかで、温かさも漂う。ベテランの板前が、カウンター越しにいろいろな小料理を次々調理して出してくれるのをひと口ひと口味わっている感じである。
どこか、ほっとした気持ちにさせてくれる一冊だった。