オリジナル5thアルバム『SMILE』で、自身の年齢や環境にこだわらず作家的なアプローチを行い、表現力の底の無さを体現してみせたスガシカオ。この新曲でも、中学生の恋愛とも社内恋愛とも不倫とも取れる設定を通して、「それ」は「恋愛」に限るのかどうかすらわからなくなる霧の中へと、聴く者を誘う。もしかしたら2人のものですらないかも知れない自分自身の「秘密」という名の性癖。コミュニケーション不全を公言する彼ならではの洞察が、オルタナティヴなファンクに乗りひたひたと忍び寄る。
叶わない未来の予感を妙にゆるいグルーヴに乗せたミスマッチ感がいい「黒いシミ」、素直にスケール感のあるアレンジで聴かせる園山俊二とムッシュの名曲「やつらの足音のバラード」のカバーも秀逸。(石角友香)