作者は元サラ金マン。不動産を担保に高額の借入をする羽目になった人々を豊かな感受性と深い洞察力で見てきたようだ。
そして同時に描かれる、新入社員として入った青年を迎え、育てていく先輩たちの姿は、自らの職務の社会的意義を感じ、丁寧に仕事をする生真面目なサラリーマンそのものだ。
よく有る「アリ地獄、高利をむさぼる悪徳業者!」という姿勢で書かれた本とは一線を画す、普通の世界に普通に存在するサラ金(闇金じゃなく)の、常識と節度に裏打ちされた実態がそこにはある。
労働の代価ではないマトまった金を手にするのは、当たり前に働き、毎月少しずつ分けておいて漸く手にするはずの金を、手前でドーンともらうようなもの。時間の価値、リスクが金利という形で乗るのはそもそも当然のはず。そんな「常識」にも思いをいたすのであります。