エキゾチックなロケーションと名高い建造物!　アダージョとワルツ!　華麗なビジュアルと壮大なスケール!　 ディジェリドゥーや、おまけにオーケストラまで!　ヤニーの仰天へア・スタイル!!　どれもこれも素晴らしい。このギリシア人コンポーザー兼キーボーディストが抱える大勢のファンにとって、本作『Tribute』は目一杯おいしく頂けるごちそうだ。ディスクとしての完成度の高さを見れば、それも当然の結果と言わざるを得ない。本作には、ヤニーによる1997年の2つのコンサートが記録されている。会場はインドのタージ・マハル（コンサートに使われるのは史上初）と北京の紫禁城（西洋人アーティストのコンサートに使われるのは史上初）。これ以上ない環境が用意されたことで、本作の見ごたえは確実にアップした。全編、演出も音響効果も文句なしだ。では、音楽についてはどうか。これは、各自の趣味に従って判断すればいいことだ。ある人にゴミ同然と見なされたものが、別の人に美しく立派だと評価されるのは、珍しい話ではないのだから。しかし、音楽的趣味を抜きにして論じるならば、ヤニーらしい作風、つまりニュー・エイジとクラシックとワールド・ミュージックが融合したサウンドを象徴的かつ大々的に示す作品だということになる。90分間の本編は、2つの公演からのナンバーを組み合わせながら展開。世界各地から集まった50名近くのミュージシャンとシンガーが、見事な演奏を聴かせてくれる。とりわけ、ソロイストとして参加したヴァイオリニストのカレン・ブリッグスとギタリストのペドロ・エウスターチェの自発的なプレイは要注目だ。
   これだけでは終わらない。というのも、本作にはDVD特典が満載なのだ。中でも最大の目玉となるのは「No Borders, No Boundaries」だろう。これは美しい撮影が印象的な1時間の映画で、俳優のクリストファー・プラマーがナレーションを担当。ある時はドキュメンタリー、またある時は紀行ものという体裁を取りながら、ミュージシャンのプロフィール、ヤニーのバイオグラフィ、インドと中国の歴史、コンサート実現までの道のりに触れている。その他の特典は、ヤニーの長時間インタビューとディスコグラフィ、音声オプションなど。結局、ヤニー否定派は本作に対しても悪口を浴びせるのだろうが、それなら最初からリンプ・ビズキットのCDでも聴いていればいいのに、と言いたい。（Sam Graham, Amazon.com）