その中の音楽スタイルで異色を放っていたのが「Delerium」と
「Synaesthesia」である。初期のDeleriumでは、ゴシック・ホラー・
アンビエントとでも言うべき気色悪い硬質なサウンドを展開。
プログレからの影響という説も確かに頷けるが、ホラー映画のサンプリング
等、そこらへんはアメリカ的ヘヴィメタ世代の嗜好のそれであろう(笑)
94年、明らかにエニグマとの衝突によると思われるサウンドへと
進化したのがこの作品。だが遺跡に迷い込んだような、硬質で輝度の高い、
かつオドロオドロしいサウンドは明らかに彼ら自身が持っていたもの。
エニグマから学んだのはハウスビートとボーカルの効能である。
ここではまだまだ彼ら独特の「民族パーカスとビートの絡み」は弱い。
Kristy Thirskのボーカルの官能的なパフォーマンスは歴史的。
天国に澄み通る声、地獄を這うような声の二面性を行ったり来たりしながら、
シュールな迷宮的コラージュサウンドに響き渡っている。