レース資料、“アーカイブ”的側面が強く、アップ・トゥ・デイトな情報が掲載されているワケではない為、多くの人にとってはあまり食指の動かない一冊かもしれません。

ただ、当時のニスモチーム監督である水野和敏氏の今日の視点からのロングインタビューが読めるだけでも、この一冊には価値があると考えます。
単なる昔話にとどまらないその内容は、当時のレーシングフィールドから現在の日産GT-Rの開発に至るまでぶれることなく貫かれている氏の哲学であり、それはまた同時に「何かを成そうとする人間がすべからく持つべき基本理念」にまで発展させることさえ可能な（むしろそうあるべき）ものです。

モーターレーシングに対するロマンチシズムとリアリズムの、相反することのない高次の両立の仕方が、図らずもここに示唆されているのではないでしょうか。

厚さはないムックで、その分割高感を感じるものかもしれませんけれど、「レーシング偏差値」は非常に高く、一読の価値はあると思います。


（2/25/2010 追記）
「休刊らしい」との噂を、上記レビューに織り込んでしまっていましたが、つい先頃「刊行継続」が公式に発表されました。噂に狼狽し、いささか先走って“結果的に誤った情報を記載してしまった”ことを、ここにお詫びし、訂正（←そのくだりを削除）します。