最近のバッハ研究によりますと、バッハの最後の作品は「フーガの技法」ではなく「ロ短調ミサ」であることが判明したようです。クレドから最終の楽章までの部分が最晩年に作曲された部分です。すなわち、バッハの膨大な作品群の集大成といいますか、ライフワークの締めくくりの作品なのです。
ご存知のようにバッハはルター派のプロテスタントです。カトリックのミサ曲の形を借りて、この大宗教作品を作曲した動機は知りませんが、自分の信ずるキリスト教の宗教感を、普遍的で不変的な音楽形式を借りてこの世に残したかったに違いありません。
バッハの音楽を生涯追い求めたリヒターの歴史的名盤です。
現代的スピード感を持った古楽器での名演奏は数多く発売されており、それから「ロ短調ミサ」を聴かれた方には古さを感じさせるスタイルかもしれません。だだ、その精神性の高さを越える演奏は21世紀の今日、まだ聴くことができないほど別格の存在ですね。