深川澪通りの木戸番夫婦の『この人に会えさえすれば』という政吉のお若の気持ち。今の深川よりももっと縦横に川があって、いくつもの橋を渡って、この夫婦に会いに行く気持ち。それは一言で言えば『ここにいてよかった』という気持ちなのだろう。単純だけれども、現代にそう言う場所はあるだろうか。『この夫婦が奇跡だからた。小説だからできるんだよ』というかもしれない。しかし政吉もお若も奇跡を起こすわけではない。夫婦に会うから何が変わるわけでもない。ただ、何かしら決定的な悲劇がこの夫婦がいたおかげで回避できたのかもしれない、と私たちがかってに思うだけだ。
日本で私が東京にしか住んだことがないので、その東京ーいわる”江戸”-をもっと理解するのにこの本がどれほど役に立ったか言葉でいえない。昔の人が大事にしたことが現代人と少しも変わったいないことがよく分かった。例えば、金、出世、愛、死についての考え方が今も変わっていいない。
最後に、こういう虚構の物語が面白くないと意味がない:この点につぃても北原さんがさすがに読者が同情できる人物を見事に作った。 機会があれば、是非この本を読んで見て下さい。