オヴァロナーの激化する陰謀を阻止せよ!懐旧ローダン・シリーズ第386巻。
★★★★★
女性が人口の大多数を占め権力を握るオヴァロンの惑星でのブリーとダントンの苦闘と《ソル》帰還後の災厄を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第386巻。本巻の執筆者は、若手NO.1のフランシスと最古参の大御所ダールトンです。ティフラーと旧ミュータントは故郷銀河の惑星ガイアに残り、マスクの男アラスカは消えたテラで孤軍奮闘していますが、本書で遂にローダン・ファミリーと呼ぶべき仲間達がほぼ全員集結しました。この長大なシリーズを最初から読んで来た方々にとって本書後半のエピソードは久々に古き良き時代を思い出させ懐かしさが込み上げて来るでしょう。
『《ソル》還る』H.G.フランシス著:女性ばかりのオヴァロンの惑星に着陸した《ファラオ》の男性乗員たちは、結婚相手を求めるオヴァロナーの女性達から盛んに誘惑作戦を仕掛けられる。一方ブリーとダントンは《ソル》の帰還に備えてニューガス燃料製造施設を建設すべく惑星の女執政官と交渉に入るが予想外の困難に見舞われる。本編では高が女性と見くびって油断し手痛い目に遭うブリーの苦難と《ソル》帰還の喜びも束の間の恐るべき災厄に終始心がかき乱されます。『ヴリノスの亡霊』クラーク・ダールトン著: ケロスカーの計算者ドブラクの協力で消失した地球探しの旅に出発した《ソル》は同一進路を取る謎の小惑星を発見する。その頃ネズミ=ビーバーのグッキーは未知の送信者からテレパシーでのコンタクトを受け苦痛に襲われる。本編ではソラナーの失恋男が危険な心理状態にあるのをグッキーが察知して救う活躍が読み所で、悲しい結末はしょうがないとは言え振られた男が可哀相で切なくなります。主筋の他にも興趣を覚えるシーンが多く、ローダンが1600年前の月面でのアルコン人クレストとトーラとの出会いを回想し時間の意味について思索する答の出ない疑問の数々、懐かしいハルノやエルンスト・エラートへの言及、グッキーが皆の前でブリーをからかう場面、ブリーが重責から解放されてのんびり映画鑑賞にハマるのも愉快です。そして最後に古代テラの往年の大女優B・Bの話題で皆が和気藹々と盛り上がる様子が微笑ましく、滅多に読めないこんな珍しい場面はやはり大ベテランのダールトンにしか出せない味だと思います。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは本書から通巻400巻までの仮題予告と388巻から登場予定の新人作家ペーター・テリドのプロフィールの紹介です。これまでテラナーを援助して来た超越知性体‘それ’に迫る危機という複雑な要素が加わったシリーズはますます面白くなりそうで、ある意味で公会議との戦いよりも興味深いローダン一行の地球探しの旅に今後大いに期待しましょう。
旧友との再会、そして新たなる旅立ち
★★★★☆
「≪ソル≫還る」と「ヴリノスの亡霊」を収録。
ブリーとダントンは、圧倒的多数の女性たちの星オヴァロンの惑星で、女性たちの≪ファラオ≫乗員への惑星引き止めの誘惑と戦いながら、いつか帰るであろう≪ソル≫の燃料供給設備構築を目指ししていた。女性たちが更なる過激な対応に出ようとしたその時ローダンとアトランを乗せた≪ソル≫が帰還する。そしてメインコンピューターネーサンの指示で燃料供給設備が準備されていたことが判明する。上位の関与が示唆され、3582年8月3日失われた地球探索に出発する。“それ”からの使者も現れ、新たなる脅威として“バルディオク”が告げられる。
再度ローダンシリーズメインメンバーが集結し、次のステップに旅立とうとする。“それ”は一体どういう存在なのか?上位次元の“超知性体”とは?一方で、迷い悩む普通の人が決断する姿が描かれ、人間らしさを考える。人間らしさと進化の関係は?