大学の教養教育について、よくまとめられている
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本書は、河合塾教育研究部のプロジェクトチームに参加した著者が、大学の
教養教育や初年度教育の実態や特徴をつかみ、その観点から大学の教育力に
ついてまとめたものである。
つまり、本書のいう「大学の教育力」とは、「教養教育や初年度教育の観点
から見た教育力」ということである。
国立大学については、ほぼ全ての大学のカリキュラムを精査した結果は見事
である。また、全部で70以上の大学をヒアリング調査し、一部の公立大学や
私立大学の教育力や特徴も分析している。
調査された大学には、東京大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学と
いった著名な大学に加え、国際教養大学、金沢工業大学、関西国際大学と
いった現在その教育に注目が注がれている大学も含まれている。
かつての名実ともに「高等教育」であった時代から、現代ではユニバーサル化
してきたともいえる大学教育。教養教育や初年度教育を見ることで、その大学
が教育にどれほどの力を注いでいるのか、その一端が見えてくる。本書は、
この点において非常に意義ある本だと感じる。
ただ、教養教育、初年度教育といっても、それは本書のタイトルにある「大学
の教育力」の一部をさすものであることは認識して読み進めなければならない
だろう。何せ、もう一つの大きな柱である「専門教育」は含まれていないのだから。
そうはいっても、今後の大学教育を考えるにあたっても、受験生や進路担当の
先生方にとっても、非常に意義ある、よくまとめられた本である。