プログレ史の頂点に位置する何枚かの1枚。
★★★★★
ピーター・ガブリエル脱退後の1枚。
フィル・コリンズが、ガブリエルそのまんま状態で登場。彼の驚異的なドラムスも炸裂。
最も魅力的なのは、静寂からエネルギー全開状態になってテーマが奏でられる部分のドラマ性と暴力性と叙情性。
つまりプログレッシブロックのエッセンスが、見事に表現されている1枚。
特に頭2曲、4曲目、5曲目、アルバムラストを飾る7曲目、8曲目の12分30秒のメドレーは出色の出来。
このアルバムの後に中心メンバーの一人だったギターのスティーブ・ハケットは脱退。
メンバーの緊張状態が名盤を生むというプログレロックの伝統にもかなった作品。
PG脱退後の最高傑作!
★★★★☆
ピーター・ガブリエル脱退後、ヴォーカルをフィル・コリンズが取ったジェネシス・プログレ時代の最高傑作ではないだろうか。特に素晴らしいのはトニー・バンクス作の"One For The Vine"、ステイーヴ・ハケット作の"Blood On The Rooftops"。英国の伝統文化の香りを醸しながら、ポピュラー性もあるプログレ・ナンバーに仕上がっており、そのサウンドの方針にはピーター・ガブリエルのおどろおどろしい表現よりフィル・コリンズのすっきりした美声が合う。30年以上前に初めてLPレコードで聴いた、"Blood On The Rooftops"の心を締め付けるような感動を再び味わいたくてCDを購入し、追憶に耽った。
『怪奇お伽噺』的な世界が完璧に出来上がった終着点とも言えるアルバム
★★★★★
1976年12月27日リリース。1976年9-10月、オランダ、Hilvarenbeekのライト・スタジオにて録音。このアルバムを最後にギターのスティーヴ・ハケットが脱退するのだが、スティーヴ・ハケット自身はこのアルバムをジェネシスのアルバムの中で最も気に入っている作品と言っている。
ハケットの弁も最もで、4人の技術的なコンビネーション、特にスティーヴ・ハケットのギターとトニー・バンクスのキーボードが変幻自在に牽引する音空間はジェネシスのここまでの作品の中で最も濃密であって、ピーター・ガブリエルの推し進めた『怪奇お伽噺』的な世界が完璧に出来上がった終着点とも言えるアルバムだと思える。この重厚なサウンドは次作『セカンド・アウト』でほぼ完璧にライヴで再現されることになり、そのライヴ・アクトの実力にも驚くことになる。
アルバム発表当時のライナーは伊藤政則氏が書いているのだが、誤字脱字だらけで、未だピーター・ガブリエルの内容を引き摺っていてまったく的外れである。全英第7位・全米第26位となかなかの成功作であるが、ジェネシスの変容と前進はまだまだ続くのだ。
トニー・バンクスの凄みが存分に発揮された傑作
★★★★★
ジェネシスというバンドは5人の極めて傑出したミュージシャンによって構成されており、まさに奇跡のオールスターによる化学反応によって素晴らしい音楽が紡ぎ出されているのであるが、本作品はそのうちの1人であるピーター・ガブリエルが抜けた後につくられた2枚目のアルバムである。このアルバムは、残った4人のうち最も笑わないメンバーであるキーボードのトニー・バンクスの天才性が遺憾なく発揮されている傑作である。特に1曲目の重層的な音の積み重ね、コード展開など、もうトニー・バンクス以外の何者でもない独自の世界を創り出しており、そこに他のメンバーが音を絡ませ、フィル・コリンズのドライブ感溢れるドラムがリズムを刻み始めると、もう恍惚の音の万華鏡ワールドが展開する。ただし、トニー・バンクスが前面に出た分、ギタリストのスティーブ・ハケットはそれまでの作品に比べて随分と目立たなくなっている。このアルバムでの彼の曲の扱われ方に対する不満は彼の脱退の引き金となるわけだが、彼なしでのジェネシスはその後、違うバンドになってしまう。1曲目が何しろ素晴らしいが、それ以外ではアルバムを締める9曲目がジェネシス最高のラブソングとして最近(2008年)のライブでも演奏されていた。
彼らの一つのピークを示したプログレ屈指の名盤
★★★★★
76年発表の9作目。日本では『静寂の嵐』のタイトルで長年に渡って愛され続けている傑作アルバムだが、ファンには『鍵盤の嵐』と評されるトニーの鍵盤が全面に出た作品である。トニーとハケットとの確執は昔から色々と言われているようだが、結果としてこのアルバムの後、ハケットはグループを去った。本作と前作『トリック・オブ・ザ・テイル』は彼らのブログレという範疇に置いては完全なピークに当たり、曲、完成度においてもプログレの名盤の中でも重要な作品である。むろん個人的には死ぬほど好きな一枚である。
没落貴族を歌った1.からしてアレンジ、曲ともに屈指の完成度を誇る。不安定な雰囲気のイントロから重圧なメロトロンが入り、目の前が開けるかのような歌メロと流れ、中盤のシンセによる短い間奏と一瞬たりとも聞き逃せない曲構成は畑が違うものの、パープルの「紫の炎」を彷佛とさせる完成度。2.は憂いを帯びたメロディの美しい佳曲。フィルのヴォーカルも素晴しく、かつトニーのピアノもバッキングとしてはベストとも言うべき演奏を聞かせている。3.は何も言うべきことはない屈指の名曲。やはりトニーのエレピによるソロは印象的。6.のガット・ギターによるソロからがハケット色が強くなり、また盛り上がる。その6.はフィルのヴォーカルが素晴しい名曲だが、7〜8.のインスト、屈指の名曲9.の流れは凄まじい感動を覚える。
幼少の記憶を書かせていただけば、田舎である地元のCD屋にジェネシスは本作しか置いてなかった。(ちなみにマイク・オールドフィールドは『ムーンライト・シャドウ』のみ) やむなく本作を聞いて最初はガッカリしたものの、今はないそのCD屋のセンスの良さを懐かしんでいる。