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大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)

価格: ¥882
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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今、このような政治家がいないのが寂しい。 ★★★★☆
大平正芳は、香川県の貧農の家に生まれ、若くして大病などの挫折も乗り越え、苦学しながら東京商科大学卒業後大蔵省に入省、その後池田勇人の秘書官を経験した。
池田勇人の勧めもあり42歳で政界入りしてからは、池田政権時代から福田政権時代までの長い年月を、脇役の政治家として成して来た多くの仕事は、高く評価されてもよいと思う。
総理になってからも、鈍牛と言われたり、”あー、うー”総理などと悪口を言われていたが、そのようなマスコミの表面的な報道だけを鵜呑みにして彼を評価してはならない。
地方分権ともいえる政策を模索していたことなども記録に残っているから、彼の政治家としての高い見識が伺えるのではないだろうか。
古い日本の再興(岸信介や中曽根康弘など)政治思想とは、一線を隔した政治思想を固辞していたことからも、彼が保守政党にいながらも、かなりリベラルな政治思想の持ち主だったことが理解出来る。
海外の主な新聞(4紙と言われていたと記憶するが・・)にも毎朝目を通し、グローバルな視点で日本の行く末を見据えていた政治家だった。
これからというときに、彼が世を去ったことが、その後の日本にとって大きなマイナスだった。
今、このような政治家がいないのがなんとも寂しいかぎりである。

「鈍牛宰相」「アーウー総理」の功と罪 ★★★★★
最近再評価が進む大平正芳元総理の生涯を追い、その先に保守政治とは何かを見つけようという著者の意欲作。素直に評価できるいい本でした。
大平首相時代は私が小学生のころ。とにかく「アーウー」のモノマネをしたことと突然亡くなってしまったことしか印象にない総理大臣でした。ところがその素顔は敬虔なクリスチャンであり、また、理路整然とした政治家であったことが本書でよく分かります。
本書中盤は大平氏の評伝というよりも戦後自民党史、もしくは総理大臣列伝の様相を呈していますが、青年期と首相時代の章では大平氏の理念と行動が詳細に解説されています。
田中角栄と盟友関係にあったこともあってか政治とカネの問題にはあまり手を打たなかった印象があり、その点では課題を残したのでしょうが、70年代後半にあって、「経済から文化への転換」を標榜した点、そして何よりも、在野の若手学者などを起用し9つもの研究会を立ち上げ「時の政府の方針に沿わなくてもいいから21世紀に向けた理念を作り上げよ」と指示した先見性。また、「首相にはリーダーシップはいらない。コンダクターの役割でいい」との言葉。これは彼が国民の力を信用していたからにほかならない発言だと思います。
本書は多少功績のほうを持ち上げすぎの感はありますが、「鈍牛」と称された大平氏の再評価をなす力作と評価します。
21世紀を展望した知性派「鈍牛」の生涯 ★★★★☆
 1953年に生まれ五百旗頭真に師事した政治学博士が、2008年に刊行した本。大平正芳(1910〜80年)は、香川県の貧農の三男として生まれ、農魂気質を身につけながら成長し、1929年キリスト教に入信し、1936年資本主義の弊害を協同体思想により乗り越えようとする卒論を書いて大学を出、大蔵省に入省した。戦時下、彼は楕円の哲学や60点主義の哲学を持ちながらも、蒙疆の占領地行政に関わり、中国への贖罪意識を持った。彼は大蔵官僚として安堵感と共に敗戦を迎え、日本国憲法を「一つの芸術品」として受け入れ、商人国家としての日本の再建に尽力する。その後彼は池田隼人の秘書官を経て、1952年以来保守本流の政治家となった。彼は官房長官として、盟友田中角栄と共に、強硬論を吐く池田首相を抑えて低姿勢をとらせ、また外相として米国の核持ち込みを容認した。彼は佐藤内閣の通産相として資本自由化を、田中内閣の外相として日中国交回復を主導し、三木内閣の蔵相、福田内閣の幹事長を務めた後、1978年末に「信頼と合意」を掲げて、「三角大福」最後の首相に就任した。米国の指導力の低下、高度成長の負の側面の顕在化を踏まえ、彼は日米安保を基軸に据えつつも、「戦後の総決算」を目指し、地球社会の時代、文化の時代、地方の時代を展望する9つの政策研究グループを立ち上げた。また彼は自公民路線で革新自治体をつぶし、東京サミットを乗り切ったものの、外交面ではイラン革命、ダグラス・グラマン事件、ソ連のアフガニスタン侵攻等に、内政面では与野党伯仲状況、一般消費税問題に起因する衆院選敗北後の自民党内40日間抗争、浜田幸一の不祥事等に悩まされ、結局ハプニング解散に伴う初の衆参同日選挙の最中に亡くなった。汚職には甘いが、誠実に実務をこなし、知性と言葉に重きを置く大平を、近年の劇場型政治を憂慮する著者は高く評価する。
大平に見る保守政治の理想 ★★★★★
「戦後保守とは何か」とサブタイトルをつけながら、より保守色の強い岸や福田赳夫ではなく大平を中心に持ってくるところに、理想とする政治を考える上での筆者のメッセージが読み取れる。
同時代の政治家でも成長路線を突っ走った角栄や、政治改革の三木、独特の言語感覚で強烈な印象を与えた福田赳夫を違い、大平のキャラクターは地味で分かりにくい。しかし強烈にメッセージを押し出さないその姿勢にこそ、筆者は良質な保守政治を見出しているようである。
本書には大平の著書や発言を多く引用してあるが、その中から印象に残ったものをふたつ。
「政治が甘い幻想を国民に撒き散らすことは慎まなくてはならない。同時に国民の方もあまり過大な期待を政治に持ってほしくない。」
「政府が引っ張っていって、それに唯々諾々とついていくような国民は、たいしたことは成し遂げられない。政府に不満を持ち、政府に抵抗する民族であって、はじめて本当に政府と一緒に苦労して、次の時代をつくれる」
大平が始めて国民に消費税導入を訴えたのは、こういった思想があってのことだろう。

一方で本書は大平の出生からその死までを追いつつ、彼の思想形成の過程を分析している。田園都市構想、環太平洋連帯構想など大平が実現を目指した政策も分かりやすく解説してある。
また先の同世代の政治家に加え、池田勇人、佐藤栄作、宮沢喜一らの人間関係の記述も多く、そちらの興味がある方にもお薦めである。
戦後保守の軌跡 ★★☆☆☆
 読んでいる最中は、面白かったです。そして、読み終
えて残るのは、くっきりとした戦後保守の軌跡です。た
だし、それ以上でもそれ以下でもありません。しかし、
この時期を考える上で、それを無視できないこともまた
確かなことでしょう。
 特記しておきたいことが、ふたつあります。ひとつは、
大平の興亜院での経験です。占領地での経済政策の
破綻を見たことから治者の心得を学んだこと、そしてそ
れが保守本流のひとつの源流になっていること。もうひ
とつが田園都市構想の先駆性です。それは、高度成
長の歪みの補正とポストモダンという両課題を取り込ん
だ意欲的なものでした。記憶していてよいことだと思い
ました。