四谷怪談を大胆に読み解く
★★★★☆
著者は小説家。江戸の文学を専門にしているとかいうわけではないという。しかし、最近は河竹黙阿弥や近松門左衛門についての本を手がけているようだ。
本書は、『四谷怪談』について独自の解釈を示したもの。作者である鶴屋南北の出自や人生への注目、上演された化政期の文化への見直し、作品そのものを「文学」として読み解くことなどに力が入れられており、なかなか興味深い。
なかでも「お岩さん」のキャラクターについて従来とはだいぶ異なった解釈をしており、女性として聖化していくのだが、これはこれで説得力がある。
やや強引な点もあるものの、一読の価値のある一冊であろう。
雑誌記事程度の薄くて軽い内容にガッカリ
★☆☆☆☆
「四谷怪談」に関してはある程度の知識があってこの本を読んでみた者ですが、論拠の薄い思い付き的論考にしか思えませんでした。
主要研究者の説などもある程度紹介してはいますが、はっきりとした理由も書かずに自分はこっちの説に賛成、といった調子。お岩貞女説を採る理由は?田宮神社の宮司さんと親しく話したから?(神社は立場上この説を採るしかないというのは、有名な話です)
お岩稲荷が下級御家人の女房たちに信仰されてたって証拠は?幕末・明治以降、花柳界の女性に人気があった(縁切りのご利益で)という話なら聞いたことがあるけど…。
新しい見解としてこのような説を主張するなら、その裏付けとなる資料や証拠を(簡単でもいいから)挙げてほしい。この程度の内容に「新釈」などという大げさなタイトルはどうかと思います。
南北の芝居を丁寧にたどる入門書だったら、同じく最近出た塩見鮮一郎氏の「四谷怪談地誌」のほうがずっと良質でお勧めです。
お岩さんとは何か
★★★★☆
現代でも活躍するたたり神「お岩さま」。
その源である鶴屋南北の『四谷怪談』のあらすじ、
お芝居が成立した時代背景、公演のいきさつ、
お岩さんのモデルなどを考察し、
今も「たたる」といわれるパワーのありかを考えた本。
作家である著者が、江戸文学の作家をとりあげたいと考え
書き上げた本です。
専門家でないゆえに、著者がさまざまな資料に当たって
支持する説が、支持しない説とともに紹介されています。
まじめで謙虚な姿勢が好感度高いです。
内容も、さほど詳しくない自分には、
新しい情報がいっぱいで、興味深かったです。
四谷怪談のガイドブック
★★★★★
四谷怪談のガイドブックとして、最適。
コンパクトに、あらすじ・作者鶴屋南北について・その背景の化政文化について・どう初演をされたのか・南北が何を題材にしたのか等が述べられています。
お岩さまが何故、日本人にとっての強力な祟り神になり得たか?そのために、お岩さまの造形に、日本人が持つ恐怖イメージや象徴を南北がいかに上手く取り入れたのかが書かれていて、実に興味深く読めました。
他にも、はっとさせられる指摘が多く、四谷怪談について知っている人にも知らない人にもお勧めできる本だと思います。