「人にも自然にも優しい空間の作り方」が書かれた本
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エコロジカルランドスケープというと、なんだか専門用語のような気もしますが、この本には書かれているのは難しい土木技術の解説ではなく、『人にも自然にも優しい空間の作り方』です。
そのために必要となる理念がまず最初に書かれており、事例の紹介などを経て、詳細なデザイン手法が書かれています。また、これらは難しい言葉ではなく、誰にでも理解できるような優しい言葉と印象的な絵で語られています。
私が特に印象的だったのは荒廃した湿原や水辺の再生事例です。人は自然を壊すことも出来るけれど、このエコロジカルランドスケープという技術を使うことで、再生させることも出来るということに感動しました。
この本を、特に建築学科・土木工学科に在籍する学生やこれらの学科を目指す学生に、是非読んでいただきたいです。デザインすること、街を作ることの概念を一新してくれることでしょう。
絵がすごい。スケールアウトしていない本当のデザイン
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多くのアースデザインを数多く見てきたが、これほど計画デザインと現物があっている絵を見たことが無い。たぶん筆者は数多くのデザインの中から厳選したのかもしれないが、普通は鳥瞰図を描いて、こんなに綺麗ですよ!と説明するのが一般です。しかし、筆者は人の立った位置でしか描いていない。それなのにこれほど訴えてくる絵(デザイン)を見たことは無い。筆者は簡単に言う。デザインである絵を単にそのまま図面にするだけであると。その手法も載せている。これほど、簡単にデザインできるかと錯覚してしまうほど、簡単に述べられているのはすごい。絵を見るだけでも楽しいが、ランドスケープデザインの入門書と応用編までの必読書を得た手ごたえがある本である。
最もためになる土木技術者のための本
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この本は土木技術者のバイブルになり得る本だと思います。
自分が学生のころに発刊されていれば今の人生がもう少し早い段階で変わっていたのではと思えるほどです。
著者の経験と実績に裏づけされた内容はとてもわかりやすく迫力があります。土木技術者としてのマインドのあり方、自然環境との対話すべてが参考になります。
是非、教科書として学生にも読んでもらい今のビジネス中心のランドスケープ概念が変わることを期待します。
エコロジカル・ランドスケープというデザイン手法
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景観に興味がある方におすすめ。
そして、それ以上に、風景画を描きたい人にオススメ!
馬を描くとき、その骨格、筋肉等を理解して、はじめて本物が描けるという!
風景を描くとき、森の成り立ち、奥行きの成り立ち等が理解できてこそ、
その成り立ちが分かり、本物の風景が描けるのだということが分かった。
そして、最も大切なことは、景をとおして心を伝えることなのだ!
著者は、風景画のレオナルド・ダ・ヴィンチかもしれない。
現代の景観にルネッサンスを起こそうとしているのかもしれない。
生物多様性と土木と景観デザインのベストミックスを探して
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あとがきによると、この本は「土木技術」という雑誌に連載された内容をもとに書かれたらしい。だとすると、著者が本当に期待しているこの本の読者は、「環境に配慮した美しい土木」の実現を目指している現場監督さんや設計者、発注者としての行政マンなのかもしれない。
一方で、全体をぱらぱらめくってみると、随所に入れられた水彩画が美しく、ランドスケープデザインの学生にとって、だいぶ刺激になると思われる。デザインを学びながらも、エンジニアリングや自然環境の分析の基礎知識を身につけたい学生さんたちに勧めたい図書である。
図や写真が盛りだくさんで、ちょっと読みにくい感があるが、50に分けられた1つの節ずつを読んでいくと、読みにくさはそれほど気にならない。おそらく、著者が講師として学部生に課している課題が、本書でもひとつの節にまとめられているからだろう。著者による「ランドスケープ・デザイン実習」のノウハウが、惜しみなく紹介されている。
私が本書で一番身につけたいと感じた技術は、「スケッチと平面図の間を自由に行き来しながら情景をデザインする」手法である。ちまたには、いかにも平面図が真っ先に描かれたと感じさせる空間が多い。かっこいい平面図は、必ずしも快適な空間やかっこいいスペースをつくらない。歩行者の目線から見たスケッチにこだわり続ける著者に、敬意を表したい。