サイレント期時代劇で伊藤大輔＆大河内伝次郎と並ぶ名コンビだった（と個人的に信じている）稲垣浩＆片岡千恵蔵コンビの貴重な現存作品。データによればオリジナルの上映時間は２４コマ／秒の映写速度で６０分の作品ですが、本ＤＶＤは３１分。短縮編集版ではなく、冒頭を含めてあちこち欠落、損傷した結果残っているのがこれだけ、というプリントです。そのため、物語の出だしが分からないのに加え、肝心なところで話が飛んでしまったりします。また、ＤＶＤ化にあたってもＢＧＭやナレーション（弁士説明）は付けておらず完全に無音です（値段を考えれば仕方ないですが）。ただ、画質は、傷はあっても充分に観られるものです。
　上記の通りの不完全なプリントなので作品の評価は難しいのですが、「ありきたりの仇討ち物に三角関係をからめ、登場人物がお互いを追いかけながらすれ違ったり、関わったり、という捻りを加え、脇のキャラクタやサブプロットにも工夫をし、明朗でありながら適度の感傷も併せ持つ、いかにも千恵プロ作品らしい佳作」だったのではないかと「想像」します。「想像」するしかないという所が悔しく、完全な形で観たかったと切実に感じるのですが、それでも観せてもらえて本当によかったと思います。千恵蔵、稲垣監督、サイレント時代劇映画、どれか１つにでも関心のある方は是非ご覧になって下さい。