これまでで最も出来の良いシリーズと言うと議論の余地があるところだが、『24』第5シーズンは文字通りバーンという音に始まり、中央アジアのオイル供給操作を企む重役レベルの複雑な陰謀を追って、その緊張感が持続する。一連の策略、予想外の展開、深く秘められた陰謀計画がエスカレートする中で、危機に次ぐ危機に見舞われながら、チャールズ・ローガン大統領(グレゴリー・イッツェン)が今しもサインしつつある米露協定の阻止を要求し、致死性の神経ガスをロサンゼルスに撒くと威嚇するロシアの分離主義者(英国人俳優ジュリアン・サンズ)率いる革新派グループと不興を被った前CTUエージェント(ピーター・ウェラー)が関わる悲惨な政治的暗殺を起点として、丸1日にわたる試練が始まる。ローガンの情緒不安定な妻マーサ(ジーン・スマート)、諜報部エージェントのアーロン・ピアス(グレン・モーシャワー)そして職員チーフのマイク・ノヴィック(ジュード・チッコレラ)が徐々に陰謀を明らかにし、CTUの一匹狼ジャック・バウアー(シリーズ主演のキーファー・サザーランド)が自主的な流浪生活から立ち戻ってCTUの同僚に助力、事の真相を暴くため命を賭した闘いに乗り出す。一方、CTUチーフのビル・ブキャナン(ジェームス・モリソン)は、経験不足で横柄な上司(ショーン・アスティン)に横槍を入れられ、また国土防衛庁チーフのカレン・ヘイズ(ジェイン・アトキンソン)がリードするCTU管理職交替のため、バウアーと忠実なるCTUメンバー達は殺害された友やリーダーを追悼し潜行状態で独自に動くことを余儀なくされる。他の出演者には、CTU実習生で非凡なハッカーくずれのクロエ・オブライエン(メアリー・リン・ライスカブによる完璧な演技)、バウアーとは疎遠になっている娘(エリーシャ・カスバート)そして最愛の同僚オードリー・レインズ(キム・レイヴァー)がいる。
戒厳令と、その名もわからず謎に包まれた陰謀組織を軸として、この「5日目」では数名の重要なキャラクターを含む死者の多さに24ファンもショックを受けるだろう。それら要素の積み重なりが、ひときわ優れた本シーズンを造り上げ、サザーランドはエミー賞(ドラマシリーズ部門主演男優賞)を獲得、同様にエミー賞にはイッツェンとシャープがノミネートされ、また本シーズン初回の監督にあたった共同プロデューサーのジョン・カサーにも監督賞が贈られた。また『24』の息をのむような展開は、常にその張りつめた精度を維持できるとは限らないのだが、今回の24エピソード(各43分ほど)は非常に緻密に書かれており、スリラー構成と、組織およびローガン大統領とトラウマに悩むその妻の悲劇にドラマチックな焦点を当てることに重点をおいて、完璧な仕上がりとなっている。そして、その結果として我々はシーズン6を待ち焦がれることになるのだ。(Jeff Shannon, Amazon.com)