この本はよくもわるくも、日本の語学書だと思う。日本の語学教育の強みである、
しっかりした文法教育では絶大な威力を発揮する。その一方で口語に弱く、
文章のマレー語に偏重しているという弱点を理解しておく必要がある。

文法については、この本一冊で、言語学を専門にするような人でなければ十分だと思う。
ゆっくり二度くりかえせば、マレー語の文章が相当読めるようになる。
（よほど文学的な文章でなければ、この本をマスターしても理解できないのは専ら語彙力の
　問題だろう。）政治学や歴史学の大学院生くらいなら、これがマスターできれば
大きな問題にはぶちあたらないと思う。

この本くらいのボリュームでこれだけ体系だった文法の解説をしている本は
マレーシアで出版されているものを見ても見当たらない。そして、
マレーシア人に聞いても明確に答えられない文法事項がきちんと
解説されているのはとても心強い。
マレーシア人のマレー語に対する理解は非常に直感的なので、
私たち外国人が質問しても答えに困るものだからだ。

ただし、問題点ももちろんある。表現があまりにもフォーマルでぎこちなく感じられる
ことが多いこと、口語をほとんどカバーしていないこと、吹き込み音声がゆっくり明瞭すぎて
ほとんど聴解力を伸ばすのには役に立たないことがあげられるだろう。
いってみれば、分厚いメガネの生マジメな優等生、そんな印象の本だと思う。

マレー語教室以外で自学しようと思って買ったのがこの本です。５年ぐらい前に買いましたが、
この本だけで十分にマレー語を身につけることができました。
テープは、別売りになっていますが、暇な時に流しておくだけで耳が慣れてきます。
日本で売っているマレー語の本をかなり探しましたが、これがベストではないかと思います。

しっかり身につけたい人にお奨めです。