前向きさと元気だけではやはり大人は生きていけない、というかこの作品がリリースされた1978年当時は、若い世代にこそ、このネクラという不名誉な形容の世界観が大いに受け入れられていたのだ。自分の男を奪った女に電話して、その女がまた優しく話し続けてくれるという冒頭の朗読「元気ですか」、壮絶でもあり、女の悲しい業を描く大ヒット「わかれうた」や「化粧」、冴えた文体で不器用な生き方しか出来ない人間にとっての世の中を描く「世情」などなど、これぞまさに70年代日本のブルース。でも、実は男女の関係もミュージシャンを目指す貧乏青年も、さして人間その時代と変わりはしない…悲しさに耽溺(てんでき)するも冷静に聴くもアリな懐深い作品だ。(石角友香)
凍りつく衝撃
★★★★★
はじめてこのアルバムを聞いたとき、最初の朗読には、
「ふんふん、かわった趣向だなあ」程度に思いつつも
「うそばっかり」のあたりに、「なかなかやるなあ」って
ゆとりをかましながら聞いていた。
で、朗読が終わって、次の曲につながったときに、
この朗読は次の曲のための壮大な前振りだったことに気がついた。
気がついたときは、時すでに遅く、凍りついたように身動き一つできない状態で
曲を聞くはめになった。
中島みゆきを天才と言う人がいるけど、そんな生易しいもんじゃない。
人間技じゃない。魔女か。魔法使い。。。神かもしれない。
曲を超える曲、曲と曲の間の行間がもつパンチ力破壊力のすごさを全身で味わう貴重な体験でした。
オールナイトニッポン
★★★★★
昔みゆきさんが、オールナイトニッポン月曜日のパーソナリティをやってた頃、このアルバムとのギャップにびっくりしたものです。
ユーミンのミステリアスと谷村浩子の暗さ(?) を合わせたような歌の内容。ラジオでもこの二人の名前良く出てたな。
とにかくこのアルバムは初期を代表する名盤です。
孤独な歌姫
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中島みゆきのアルバムは、数多く聴いてきたが、ダントツで、このアルバムが、個人的には一番好きだ。何が良いかと言うと、もろ昭和を感じさせてくれる楽曲や、人間の一番いやらしい面を、あからさまに、しっかりと歌い上げてる所だ。初めて聴いたのは、中学生の頃だか、圧倒的なパワーを感じた。無駄な曲は、まったくなく、どんな、いい人でも、ここで歌われてる事は、誰だって何となく経験も、あったりするんじゃないだろうか?最近では、聖子ちゃんとCMに出たりと、露出もあるが、当時は映像なんて、記憶にない。そんなものは、ひょっとして音楽には、いらないんじゃないかとも、このアルバムを聴いていると思う。ここで、歌われてる事が、すべてだ。当時ニューミュージックなんて言葉も生まれ、フォークソングとは、少し違っていた。その後のアルバムも順調にセールスを伸ばし、今では、到底、誰も真似できないポジションに彼女は、ついてる。まぁ楽しい曲もいいが、たまには、こういった音楽に、どっぷり、つかるのも、いいものだと思う。
独特
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四枚目のオリジナルでしたよね。
「元気ですか」の朗読に始まり「怜子」へと続く導入部。
他のアルバムと比べても特異な入り方です。
3年B組金八先生で劇中歌として使われた「世情」、
初めてチャート1位を獲得し、中島みゆきの名を世にとどろかせた「わかれうた」、
広告塔になる前の桜田淳子さんに提供された「化粧」など、初期のみゆきさんの詩作の精髄が感じられる名盤だと思います。
ま、初期のアルバムの中でも「生きていてもいいですか」の次くらいにトーンは暗いんですけどね。
最強の怪アルバム?
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坂本龍一がこのアルバムに編曲で参加しています。このアルバムを製作したときスタジオでみゆきさんがギターで歌って教授に聴かせたそうですがそのときみゆきさんが歌いながら泣き出したというエピソードがあります。それを見て教授は中島みゆきは怖いとインタビューで語っています。
このアルバムは失恋がテーマの曲が多いのですがそこらへんの失恋歌とは一味も二味も違います。特に「化粧」での人間の恥ずかしい部分を思いっきりついた歌詞と泣きながら歌う熱唱ぶりは鳥肌ものです。切ないアルバムであると同時に至上最強の怪アルバムともいえるかもしれません。