一般読者も学ぶところの多い真如苑信者必読の本
★★★★★
真言宗の流れを汲む昭和に入って設立された密教である真如苑の開祖・伊藤真乗について書かれた本です。本の大半は、詩人の城戸朱理により真乗の生涯と思想が語られています。参考資料は真乗が書いた真如苑のバイブルともいえる“一如の道、” 真乗が拠り所をおいた“大般涅槃経”のみならず、その他の諸経典や、直接真乗の親族を知る人物の証言と広範に網羅されています。中でも、これまでおそらく公開されたことのない真乗の手記、真乗が撮影した写真・作成した仏像を含む79点に及ぶ写真、詳細な生い立ち(2度の改名など)など真如苑信者でも入手し得ないであろう情報が記載されています。真乗の書いた文章は“一如の道“も含めて仏教用語が頻用されており、時に難解ですが、この本ではキーワードがすべて平易に解説されています。また1)真如苑信者が唱える経文の諸仏の解説、2)真言宗醍醐派との関係、3)易学及び修験道との関係(始祖・役小角からの系譜も含めて)4)まこと教団事件の有罪判決の真相などが、巧みに説明されています。これらが複数の仏教学者の監修と一名の真如苑関係者による事実関係の照合があったとはいえ、主著である城戸朱理の取材能力・情報量の深さには驚かされます。この本一冊で仏教や真如苑のすべてはわかりませんが、真如苑の信者は勿論のこと一般読者も、それぞれに学ぶところのある本と思われます。一例を挙げますと、密教において病気の平癒を祈るとき、その目的は病気が治ること自体ではなく、信徒が仏道を歩む上で邪魔になる病気といった障害を取り除くためであると解説され、ご利益信仰の本当の意義を考えさせます。
そんなにすごい人だとは思えなかった…
★★★☆☆
3月25日、5月15日加筆修正
批判的なレビューを書くと、共感を得にくくなるが、これもしょうがないですね…。
私は真如苑の信者ではないが、知人から薦められて手にとって読んでみた。
その人は宗教心のある人なので、私も常日頃から思っている
素朴な疑問(↓以下に示す)をその人にぶつけてみるのだが、
・人間の「存在」理由は何か?
・神はいるのか?
・いるならば、なぜ神は人間を創造したのか?
・宇宙の始まりと終わりについて…など
疑問に対する答えがすべてこの本に書いてあると言われて
読んでみた。
はたして、私の疑問は一向に解消されなかったが…(苦笑)
多くの人が疑問に思っているだろう問いに対する答えは
本書のどこにも書かれてはいなかった…。
当然そういう主旨の本ではないので、読まれる方は注意されたい。
それはさておき、本書は宗教法人・真如苑の創始者として知られる
伊藤真乗の立志伝?というか伝記、一代記、人物伝である。
複数の著者が分担して執筆しており、真如苑の関係者はその中で
一人だけで、その他は学者などが執筆しているらしいので、
客観的な記述がなされているのではないだろうか?
ある程度宗教的・霊的知識がある人にはもの足りない…というか
知っていることばかり書かれている。
ただ、ひとつ思ったことは、真如苑がいわゆる「霊能」に
スポットを当てている点は評価できると思う。
これは下手をすると低俗なオカルト宗教になってしまうのだが、
「仏教」において、本来人間が有する能力が存在することを
キワモノ扱いせずに人類全体に正しく伝えていくことは、
人間の霊性を高める上でたいへん有意義なことだと思う。
この人間本来の精妙な能力が物質万能主義的生活によって
覆い隠されてしまい、人間は悟りに近づいて心の垢を落としていくにしたがい、
六神通力を獲得、或いは回復というべきか、
それらを取り戻していく存在だからである。
反対に、私の理性を反撥させたものは、
心霊治療に関しての真乗氏の誤った認識・批判である。
キリスト教文化でも霊的な心霊治療が行われているらしいが、
氏が誤解しているようなものでもなく、これも治療によって
医師からも見放された病が治癒することで、「神」を感じ、
患者自身が自らの魂を向上させていくきっかけを作ることが
本来の目的であるらしい。つまり「魂の琴線に触れる」ことを
目的とする上で、これは真言密教の目的とするところと
なんら矛盾しない。
宗教者のいけないところは、すぐに自分の宗教のみを神聖視して
他宗派を批判するところである。
それから一宗一派を立てた伊藤真乗を称えている記述があるが、
私は一宗一派を立てることはそれほど評価するものではないと思う。
言うなれば、ただ単にもとの教えを分解して混乱を生んでいるだけで、
仏陀の教えを正統に伝えているとは言い難いからである。
キリスト教も本来の教えから堕落してしまっているように、
仏教も本来の釈迦の教えは悲しいかな時とともに薄まっていく。
いずれにしても、釈迦>>空海>>>伊藤真乗なので、
人物伝、伝記として読んでもあまり面白くはない。
如何に良く生き、如何に良く死ぬか
★★★★★
誰でも一度は「何故生まれてきたのだろう?何故生きているのだろう?」と考えたことがあると思います。
辛い事があったときなど、「何でこんな思いをしてまで生きていなければならないのか?」
そのように悩み、自ら命を絶つ人もいます。
しかしこの本を読んで、「人は死ぬために生きるのだ」と言う事を痛切に感じました。
如何に良く死ぬために、如何に良く生きるか、、、
これが生きとし生けるもの、命あるものの本来のテーマなのではないかと思いました。
俗に「死後の世界」「あの世」などと表現されるところが本当にあって、
固体としての命が消えた後、より良い「死後の世界」「あの世」に精神が行き着くために、
この世で良く生きることが大切なのではないか、そのように感じ、また、宗教とはやはり、より良く生きるためのツールなのだと思いました。
仏教に関しても、その流れが分かりやすく書いてあるので、仏教初心者にもお勧めです。