数知れない「道」
★★★★★
映画「海の上のピアニスト」の原作なのですが、一人芝居の脚本として書かれている本作を読むと、何となく映画とは若干イメージが異なっていました。でも、どこがどうとははっきり言えないのですが、何かが違う感じがします。
話は、船に捨てられた赤ん坊が、船上で成長し、人の心を捉え、それを肥やしに素晴らしいピアニストになる話です。
でも、彼は陸に降りることができません。それは、その先には、数知れない「道」があるからですと、彼は言います。
三段目まで降りながら、足が止まってしまった主人公を臆病者と言えるのでしょうか。
私たちは、陸に生まれ、陸に育ち生きています。そして、何となく自分の「道」を歩いています。でも、それが間違いのない「道」だったと胸を張って言えるのでしょうか。
主人公のノヴェチェントは、船と生涯を共にします。
そのラストは、先への希望を余り感じさせず、切なさの方を強く感じてしまいます。
海に生まれ、海に育った主人公は、海に帰って行く。それが、人生ということでしょうか。
日本でも、是非、この作品の舞台を上演して欲しいなと思います。