社会派ミステリーの最高傑作、待望のDVD化!
★★★★★
「森村誠一シリーズ」は中学3年の時にTVで見たのですが、放映された作品の中で、私の心に一番強い印象を与えたのが、この「腐蝕の構造」でした。原子力開発を巡る、政界、財界、官界の癒着、その中で翻弄される研究者たち・・。そうした日本社会の構造的問題=「腐蝕の構造」に鋭いメスを入れつつも、その中で、必死に愛に生きる痛々しい男女の姿がリアルに描かれています。TVで見た後、角川文庫で原作も読みましたが、間違いなく、この「腐蝕の構造」は社会派ミステリーの最高傑作です。長く、DVD化されることを待ち望んでいたので、本当に感謝です。
当時、私はTVを見ていて、雨村(篠田三郎)は本当に飛行機事故で死んだのだろうか?、と最後までドキドキしながら見ていました。そして、雨村の行方を必死に捜す妻:久美子(島田陽子)の清楚で美しい、それでいて、芯の強い女性の姿に深い共感を感じました。また、途中から彼女を助ける謎の男:大町(松田優作)と久美子との関係、特に夫に対する疑惑が増して行く中で、大町に心を寄せ始める久美子の心の揺れ動きにも、熱いものを感じました。
最終回、すべての謎が分かったとき、この社会の中だけでなく、真実の愛を求めながらも、それを得ることのできない人間の罪深さ、人間の心の中にある「腐蝕の構造」の根深さについても考えさせられました。そういう意味で、本作品は社会派ミステリーでありながらも、人間の心、特に男女の心のひだを深く考えさせる傑作だと思います。
さらにこの作品のテーマ・ソングは、小椋佳さんの『心のひだ』ですが、まさに、この作品にピッタリの良い曲ですね。わたしの中では、小椋佳さんの『心のひだ』と『腐蝕の構造』は切り離すことができないぐらい強く結びついています。また、本作品のキャストも最高です。皆さん、個性溢れるすばらしい演技をなさっています。特に島田陽子さんと梶芽衣子さんの美しい女性同士の対決も見ものです。島田陽子さんは、本作の主人公ですが、わたし自身は、清楚で美しい彼女の魅力がとてもよく出ていると感じました。全七話の長編作ですが、最後まで見るものを飽きさせない作品だと思います。
中学2年の時、リアルタイムで見た・・・・
★★★☆☆
1977年、角川映画第二弾の「人間の証明」が公開された。当時、私は中学二年だった。テレビの宣伝量が半端でなく多く、胸をときめかせて映画館(新宿プラザ)に行った記憶が残っている。ジョー山中の主題歌はいまだに好きな曲だ。
映画公開のプロモーションの一環として、毎日放送(東京ではTBS)で土曜の10時から、森村誠一シリーズ(半年間)が始まった。その第一作が、この「腐蝕の構造」だった。リアルタイムで見た記憶もあり、松田優作が出てるのもはっきり記憶に残っていた。小椋佳の主題歌も妙に頭の中に残っていた。また、大学時代に分厚い文庫本の原作も読み、その面白さに驚いた。その後、全くソフト化されていなかったので、気になっていたドラマだった。
8話からなる松山善三のシナリオは、厖大な原作を城達也のナレーションによってドラマを動かすことにし、群像劇的に各断片を連動させながら、後半は松田優作と島田陽子のラブストーリーに収束させようとしている。前半は現東映社長の岡田裕介と篠田三郎と梶芽衣子の三角関係、篠田三郎の原発理論を巡る政財界のごたごた、国防軍への財界からのアプローチ等を山の描写を含め描いていく。更に、岡田裕介が殺される事件、篠田三郎失踪事件(自衛隊機と旅客機の衝突事故)等々、断片のダイナミックな動きがあるのだが、どうも全体的な連動感がない。そして、松田優作が登場し、島田陽子とともに失踪した篠田三郎を捜し、愛が芽生え・・・
江原真二郎、岸田森、小林昭二、西村晃、山形勲、夏樹陽子・・大物役者がずらりという感じで面白いのだが・・・
毎回毎回、主役が違うというか、一応島田陽子が主役だったんだろうけど、印象は薄い。江原真二郎の狂気の謎は謎のまま、松田優作は無駄に死に、梶芽衣子と篠田三郎の関係も中途半端だった・・・
今から見ると1977年当時の渋谷の街頭とかこんなのだったかな、また喫煙シーンが非常に多く感じるのも当時の時代性か。
初回の監督は故・森谷司郎、後も井上昭、蔵原惟善、内藤誠と豪華だった。豪華な役者に豪華のスタッフ、でも内容は・・・当時、よく角川映画を批判された言葉がそのまま当てはまってしまうのだが・・・
ただ、妙な口の中に残る違和感というかざらついた血の感触というのが残る。そういうところに、松山善三のシナリオは原作のエッセンスを凝縮させたようだ。一見の価値はあると思うけど、7時間半を越える内容なので、見るには少し勇気がいる。