「大人」への道
★★★★★
このエッセイは、まだ「ローマ人の物語」も書かれていない頃、つまりずいぶん前に書かれたものなので、時々話題が古いなあ…と思われるかもしれません(著者の趣味も変わったかも)。
20年くらい前、まだマジメな子どもだった私は、この本で「大人」の「男」のひとについて、勉強させてもらいました。
いまは、老いも若きも男も女も「いつまでも子どもの心を持っていたい」「若く見られたい」人ばかりのように思えます。この本は、若く美しいことは決して否定しません。が、この本に出てくるような、冷徹でユーモアもあってとにかく頭がいい(テストの点数ではありません。もちろん)男の人ならほんとうにステキ。こんな大人の男の人が増えたらいいのに。そして、「男たち」の間に見え隠れする「女たち」のすがたも、(こんなふうにはなれないけど)とても羨ましいです。
著者の独断と偏見にみちた、楽しいエッセイです。こういう本をおもしろがれるのも、「大人」ってことですよ。
カエルの子はカエル、フツウの男は・・・
★★★★★
私の場合、過去20年近くにわたり、幾度かこの54もの痛快な
エッセーを読み返してきたが、第44章「成功する男について」
の要件はことごとく満たせないまま、もう結論を先送りでき
ない人生の折り返し年齢を過ぎてしまった。
私は、フツウでない男に成ることはできなかった。本書が
悪いのではない。さしもの塩野さんでも、並をはるかに下回
る男を、フツウまでに引き上げる効用までは用意できなかっ
た、ということであろう。
それでも本書に出逢えてよかったと思う。
頭の良い女性からもらう言葉は、男に尊い。若い頃に何度か
僥倖に恵まれたが、よくよく男を観て考え抜いてきた女性(デ
パートの老女性店員、水商売のマダムといった職業に就いてい
た)に呼び止められ、まったく商売抜きに、噛むほどに味が染
み出る教訓を頂戴した。だが、それらはまったくの偶然でしか
ない。
それ故に、書籍を通じて、塩野さんのような女性のコトバを
浴びて自らを省みることや、ガツンと一撃を受けて、自分のア
タマとコトバで考え直してみることが、確実な、男の強化策で
であり続けるのではないだろうか。
男磨きの参考書
★★★★☆
著者の鋭い男性観察にたじたじとなる本。私のようなだらしない男には色々手厳しいことが語られているが、フツウの男を一人でも多くフツウでない男にしようとする著者の提言を参考にして、手遅れかもしれないが男磨きにでも励みますか。それにしても著者が求める「フツウ」のレベルが少々高すぎはしないか、と思うのは私だけでしょうか。
自己弁護
★☆☆☆☆
半分あたりまで付き合ったのだが、読み進めるに耐えられず本を置いた。
男たちへ…?
本当にそうなのかな。
これを痛快と感じる方もいらっしゃるのでしょう。
男性へ。
買うなら少なくとも最初の一章でいいから立ち読みしてからを強く勧めます。
魅力的な男になりたい
★★★★★
副題にあるように、女性にとって、というより塩野七生さんにとって魅力的な男とはいかなるものか、というテーマにそった文集である。あくまでも軽いノリの文章だし、ここに書かれていることを鵜呑みにして真似をすればいい男になれるわけでは決してない、と文中にも指摘してもある。それでも、男の私としては、半分くらいはマジで読んでしまい、このような知的で魅力的な女性からイイ男と見られるようになりたいものだなあと思った次第である。
自分にあてはめてみると、ファッションについては、‥‥うーんこれは将来的な努力目標とさせてもらいましょう。内面的なことや行動面のことでは、男は楽天的であれ、ということに大いに共感した。男から見ても、例えば部下が惚れ込んでしまう上司とは、困難な状況に立ち向かいつつも常に楽天的な姿勢を持つ器の大きな人物である。そのような男に、なりたいものだ。
本書には、著者の女性としての感性が伸び伸びと表現されている。これを読んでから、「ローマ人の物語」を読み続けてみると、なるほどこれはローマの歴史を飾った数々の魅力的な男の物語なのだなあ、と思えてきた。特に現在読んでいるユリウス・カエサルには、塩野さんぞっこん惚れ込んでいるようだ。そういう意味では公平な歴史とは言いがたい面もあるのかも知れないが、読むのにはおもしろい。