「ハンニバル」は映画として賛否両論はあったものの監督リドリー・スコットの「個性」によるところの
成功であったと思えます。
「脳みそ・・・」といった残虐性や派手さを抑えてどちらかと言うと「羊たちの沈黙」に近い「心理的」
レクター博士との知的攻防の空気感です。
クラリス捜査官(女)とレクター博士と同じようにFBI捜査官のグレアム(男)とレクター博士との関係が
生じる点においても共通します。
また、レクター博士を中心とするキャスティングも素晴らしく、エミリー・ワトソンの盲目の演技、
レット・ドラゴンのレイフ・ファインズや時代感を持って以前の役者たちを起用していますが、
そこまでしていながら少し勿体ないような感じも受けます。
しかし、レクター博士を語る上でも知る上でもとても良い作品だと思います。
「羊たちの沈黙」がサイコサスペンスと成長の物語。
「ハンニバル」がグロと芸術、レクターの活躍と来て
本作は『真っ当なサスペンス』として満足できる仕上がり。
レクターはどちらかと言えば脇役扱いだが
アンソニー・ホプキンスの貫禄で印象は強い。
エドワード・ノートンやハーベイ・カイテルも良いが
この映画での一番は「レッドドラゴン」その人。
レイフ・ファインズがこの悲しい怪物を
ナイーブさと狂気を素晴しく演じている。
私は登場人物で、一番感情移入ができた。
『羊たち..』のようなぜい肉をそぎ落とした感じの映像や
『ハンニバル』みたいに豪華絢爛というの㡊??は違って
一見地味な映像だが、その分演技やストーリーに
集中しやすく、安心して話を楽しめる。
この監督は喜劇やラブストーリー、アクションなど
どれも堅実にまとめあげて、ちゃんとした娯楽作として
楽しませてくれる、今では貴重な職人監督だと思う。
(MTVやCM出身のハデだが物語が語れないのが多い中)
映像の魅力が若干薄いのが、全2作より
『上手くまとまった』印象になったのかも。
DVDとしては、先に見た北米版では
映画館ではプリントにとっては、
黒くツブれ気味の家の中で、家具等の質感が出ている。
お婆さんの遺品などが生々しい。
演技的には、アンソニー・ホプキンス(=レクター博士)を
喰っちゃいましたね。
原作は読後に後味の悪さが残る、救いの無い結末に対し本作は映画ならではのどんでん返し的な演出となっていて、これは映画ならではの魅力といえるのではないでしょうか。延々とグレアムの思考を追う形の原作を映像化の中で上手く変更し原作とは違った魅力を発揮しています。
残念な点はクロフォードがたたき上げの刑事のようになってしまっていること。彼は完璧にエリートのはずなのに・・・レッド・ドラゴンがかっこいいのはサービスでしょう;かっこいい方が感情移入しやすいでしょうし。
出来のいい映画なのでファンならコレクターズBOXを買ってもいいのでは?