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佐藤佐太郎歌集 (岩波文庫)

価格: ¥693
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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好きです ★★★★★
佐藤佐太郎の歌集を最近,ぽつぽつと読んでいる.

むかし,江川昭子さんが,テレビ番組で,対話相手の一般の若い人にこんなことを言っていた.正確には覚えてないけども.

平凡なつまらない毎日を送っているように見えるあなた方のお父さんの心のうちが決してつまらない平凡なものとは限らない.一方的に外から見ただけで,その人を判断するようなことは,あまりに傲慢な振る舞いである.

彼の歌集を読んでいてふとそのようなことを思い出した。

佐藤佐太郎という人は,岩波文庫の歌集に載っている年譜を見ても,どんな人だったか良くわからない.出版社をやめてからは,歌を少しずつつくるだけの毎日? おそらく端から見れば,日々を淡々と平穏に過ごしていた人だろうと思う.まあ,はっきりいえば,たとえば芸術家らしい芸術家の人生(?)とちがって面白くない.起伏に富んだドラマとは無縁の人生.そんな人が,次のような歌を詠んでいる.


われひとり部屋をとざして両の手を虚しく置けり夜の机に

夕映えのおごそかなりし我が部屋の襖を開けて妻がのぞきぬ

しろじろと虎杖(いたどり)の咲く崖が見え幸いのなき曇につづく

冬の光移りてさすを目にみゆる時の流といひて寂しむ

ひとときの/心と思へど/耐えがたく/虚しくなれば/身じろぎもせず

あからさまに/言いがたきこと/さまざまに/ありて孤独を/かつて満たし


わが胸の/うちに涙の/ごときもの/動くと人に/言いがてなくに

雲間より/かりそめに/光くるごとく/ためらひながら/生きている吾

夏の日の長く寂しき昼過ぎに玉蜀黍の花が散りゐる