素晴らしい美音、緊張感
★★★★★
ゴドフスキーのとてもイカガワシイ大作ソナタ。
よく響き、印象的な旋律としっかりした構成で、決して聴き辛い音楽ではありません。
しかし、演奏者にとってこれを弾きこなすことは至難でしょう…
録音は少ないですが幾らかのCDは出ており、最近では超絶技巧アムラン先生のものがメジャーでしょうか。
此のCDは、同じく超絶技巧派のピアニスト、シチェルバコフ先生の、ゴドフスキー録音の一つです。
シチェルバコフ氏の演奏については、何と言っても、その、徹底的にコントロールされた打鍵と声部のコントロールによる、息を呑むほどの緊張感を推します。
テンポは全体的にゆっくりです(第一楽章は楽譜どおり提示部をリピートしています)二楽章の気怠さ、三楽章のごつごつした不安さ、四楽章のワルツの狂いかけ具合、そして終楽章も足をひきずる葬列が消え入りそうな不吉さをもって迫る、たっぷりの演奏です(演奏時間は長めです)
アムラン氏を陽と例えるなら、こちらは陰の演奏とも言えます。
今までに聴いた此のソナタの中で、一番「シブイ」かなと思います。
こういった演奏は、爽快感を求める向きには好き嫌いが分かれるかもしれませんが、聴くほどに味わい深くて自分は好きです。