この本はU2のメンバー自身の言葉と写真によるU2の物語である。テキストは、150時間を超える、ボノ、アダム・クレイトン、エッジ、ラリー・マレン・ジュニア、マネージャーのポール・マギネスへの独占インタビューに基づいている。同インタビューは、この本のために著者とロック評論家ニール・マコーミックにより2年にわたって行われたものである。
写真、記録、重要記事はU2のメンバーとU2のマネージメント会社「Principle Management」の私的な資料を使用している。本書のカットは、1977年にU2最初のポスターのグラフィックを手がけたスティーヴ・アヴェリルが監督、デザインは彼の知人で「Four5One Creative」のガリー・ケリーが担当している。
U2本の決定版である。
★★★★★
写真、内容、量、そしてこの値段、まさしくU2関連図書の決定版と言っていい。
最近インタビューでメンバーの私生活や信仰心などについて自ら語ることの多くなってきたU2だが、今回はそこまで語っていいんかい?!と、逆に心配になるほど情報量に富んでいる。特に、「アクトン・ベイビー」制作時、インタビューをほとんど拒否してきた彼らだが、今でこそ語られる解散の危機、「ONE」による救い等に多くのページがさかれており、印象に残った。来日公演を延期(悔しかった!)しなければならなかったエッジの娘のことにも触れられ、あらゆる精神的な危機を乗り越えてきた過程が、ストレートに感じられる。
5人目のメンバー、ポール・マクギネスのインタビューも貴重だ。どんな音楽誌も、彼について語られることは今までほとんどなかったわけだが、U2の世界進出を支え、これほどまでに彼が信頼されているのか、ということがよくわかる。
U2はもともと、ザ・ポリスのように、しっかりした技術の上に計算されて世に出てきたバンドではない。音楽とエンターテインメントの実験を繰り返す中で、偶然を作品に変える試みを積み重ねてきた。それは今も同じで、だから次の作品は何が生まれるか予想できない。いわば次は大コケする可能性だってあるのに、常に乗り越えてきた。その予想以上の葛藤と奇跡のような情熱を、本書からうかがい知ることができる。
等身大のU2
★★★★★
表題の通り、来日の興奮冷めやらぬU2、そのU2によるU2の軌跡を描いた作品である。
メンバーの拠り所としている少年時代のアイデンティティーへの言及も興味深い。
恥ずかしながら、私はU2の歩んできた道が、これほどまでに、ロックと自らの宗教的信念、
家族、あるいは現実の世界との葛藤、場合によっては妥協であったことを知らなかった。
この作品の中で、特にボノは、正直で無防備な姿、
いつでもすぐに夢中になって語りだし、大声で演説し、
熱意のあまり言い過ぎて、強引だの言葉遣いが悪いだの
理想主義すぎるだのと言われてしまう男の姿をかいま見せてくれる。
メンバーの個性、自然で危険きわまりないほどの激しい情熱が、
25年を越えてなお歩き続けるU2そのものを燃やし続けてきたのだ。