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帝国の時代〈1〉1875‐1914

価格: ¥5,040
カテゴリ: 単行本
ブランド: みすず書房
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社会的諸勢力の交渉・連帯・対立・闘争、資本主義の突出 ★★★★★
 この著者については、いわゆる「創られた伝統」という考え方を提案した、ということぐらいしか知らなかったのだが、読む機会があったので手に取ってみた。ちょうどウォーラーステインの「新版 史的システムとしての資本主義」を読んでいたので、具体的に参考になる事例が書かれてあるのではないかと思ったからだ。実際、読み進めていくとウォーラーステインの分析を裏書きしてくれる記述が数多くあった。著者の経歴を見るとヨーロッパを遍歴した上でイギリス共産党に入党したことが記されているが、文中にはあからさまなプロレタリア革命への期待感であるとか、教条的なマルクス主義的図式が露骨に用いられていることはまったくなく、むしろマルクスの思想の最良の遺産と思われる、社会情況を諸階層の力関係の及ぼし合いとして捉える方法こそが継承され、全篇に使用されている。この第一巻では序章、革命百周年を迎えたヨーロッパ各国と周辺國の概観、資本主義経済の変容、帝国主義、代表制としての民主主義、世界各地域での労働者の状態、ナショナリズムの形成などの、主に政治=経済を中心とした事柄が取り上げられている。ヨーロッパといってもイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、あるいはロシア、ハプスブルグ帝国、オスマン帝国などでは抱えている問題の質は違ったし、それぞれの国内の社会的諸階層が抱える問題性もきれいに重なり合うことがなかったこと、更に国際的な連合・対立、あるいは収奪・従属の構造も資本主義の要請によって不可避になり始めたこと、社会改良も民主主義の精緻化も労働運動もナショナリズムも一定以上には発展せず、ただ資本主義だけが拡大していく様子が多くの事例の中で浮き彫りにされる。ウォーラーステインの言う「世界システム」の諸相が読み手に強く印象付けられるだろう。

「長い19世紀」の三部作を読破したくなった。