万葉人の恋と現代人の恋
★★★★☆
書店でこの本を手にしたとき、久しぶりに胸がときめいた。人を恋することの切なさ、トキメキ、そして素晴らしさをこれほどストレートに伝わってくるのはなぜろう。「純愛」がブームになる中、これほどまでに純粋に恋を語る文章は無い。
今の私たちも恋をする。時には許されざる恋もある。こんな恋が許されるのだろうかと不安に思うこともある。でも、1300年前の我々の先人達も同じように恋をしたのだ。その先人の恋に勇気づけられる。
この本で、面白いのは現代語訳。学校の古典で習ったような、眠くなるような現代語訳じゃない。今の若者の言葉でうまく表現している。所々にちりばめられた、若者の感覚が、万葉集とはなんともアンバランスなのだが、それがとてもうまいスパイスになっている。そのアンバランスが許されるのだ。
玉かぎる昨日の夕べ見しものを
今日の朝に恋ふべきものか
柿本人麻呂のこの歌をどう訳す?
昨日それも夕方会ったばかりなのに
今朝にはもう恋しく思っている
そんなわたしで イイノカナ・・・
最後の「イイノカナ・・・」がうまく効いている。
そして、この本にはたくさんの写真がある。これがまた上手い。
この奇抜な現代語訳を見事にイメージ化している。
時には万葉の世の恋に思いを馳せるのもよさそうだ。