『非実力派宣言』→『森高ランド』と登ってきた彼女が送る5thアルバム。はっきり言ってここがピーク。詰め込んだ様々なサウンド、ナンでもアリな世界観。先行シングル「臭いものにはフタをしろ!!」をハズした完璧な作品集。ユーロビート系の打ち込み楽曲はこのアルバムを最後に少なくなっていき、次作『Rock Alive』で終焉を迎える。「造られたアイドル」の完成形がこのアルバムと同ツアーであり、今でも語られる「雨」も全てのテイクの中で、このアルバム・ヴァージョンが一番出来がいい。この時点では後年、ナチュラル路線に路線変更するとは思わなかった。

容姿と歌う歌の内容のアンバランスの極致の最高峰！（絶賛の言葉でっせ）。この後は割りとイイコぶって世の中に入り込んでいったと思うのは僕だけでしょうか？まあそれでも別によかったんだけど、この種の作品をもっと作って欲しかったですな。歌詞が普通の女の子の視点と違うし、また一般のすねた視点の歌でもないし。こんな世界は他にはないですよ。ゴキブリほいほいが歌詞に出てくる歌は他にないでしょう。それにサンタナのオエコモバ、なんでここに出てくるんだ！この支離滅裂ワールド。それで、これでもかと「雨」ですわ。こんな歌なら殿方は「いちころ」でっせとほんまにいちころになってしもうた。中年の隠れ森高ファンをいちころにした衝撃の１枚です。

久々に聴いたのですが、やっぱりこの人は特異な才能の持ち主だ－、とあらためて思いました。抑揚のない機械的なヴォーカルで、変わった感覚の歌詞を歌うスタイルは今でも充分斬新です。僕が一番好きなのは「この街」という曲ですが、変わっていく故郷を愛しく感じる、その情緒的であるはずの歌に、「魚が安くて新鮮」「田んぼ」「馬刺し」などと、普通ポップスではありえない言葉を使って、でもやっぱりどこかしんみりさせる歌になっているというワザは、何度聴いても最高です。

最初、NHKの夜の番組（スタジオでゲストを招くような、歌番でない通常の番組）で千里さんが出演、「あるA子の場合」の歌詞を説明していたことを今でも思い出す。「昼間で寝ていて、夜はビデオをみる」というところで、NHKのキャスターもさすがに驚いていた。目立たぬ一般男性の日常を代弁してくれる存在だった。あれだけの美貌がありながら、単なる美人アイドルとしてお茶を濁さず、新しい女性歌手像を構築してくれた功績は、余りに偉大である。