前話の脇役が次話でヒロインになる恋のリレー
★★★★★
実に見事な恋のリレーである。【time say good by】(全2話、ヒロイン:佳奈)→【一週間の壁】(全2話、佳奈の仲良し友達:理香)→【冬の季節は…】(全2話、理香の姉:葉月)→【春の匂い】(全3話、葉月の彼氏(?)の妹:菜花)とバトンが渡っていく。この4人は他のエピソードでも脇役として出てくるため、この4エピソード(全9編)が1つの世界で繋がっているという趣向である。特に前半の2エピソードの絡ませ方が巧みで、それぞれの結末(オチ)がリンクしていて笑える。佳奈と理香が揃って恋した相手が同じ人だったり、葉月繋がりで理香と菜花が一緒にショッピングに行ったりもしており、なかなかよく練られた演出もある。さらにはタイトルがまた絶妙かつ秀逸で、『そして恋をする』の「そして」の前にドラマがある。これは切ない恋心や失恋だったり、見えざる壁、はたまた現実逃避や自堕落な生活だったりするのだが、これをヒロインや主人公が乗り越える、あるいは乗り越えようと決意するドラマであり、そして……恋が始まる、すなわち「恋をする」のである。ただし葉月だけは次の恋が描かれておらず、何だか当て馬的なポジションで可哀想。残りのエピソードがハッピーエンドだけに際立ってしまっている。画風は作者らしい特徴的な美麗さに溢れているが、肝心の情交描写が淡白で物足りないのが残念である。これは同じ掲載誌の『精一杯の恋(著:春輝)』にも見られており、おそらくストーリー展開(ドラマ性)に重きを置く方向性なのだろう。この点において本来なら星1つマイナスなのだが、このリレー方式と作品の世界観が見事だったので星5つ献上したいと思う(ホントは情交シーンにも相応に頁を割いて欲しいんだけどな)。