対訳入り解説付
★★★★★
対訳入り解説が付いているのに惹かれて買いました。他の音源を聴くときにも使えるから、と。
観て分かったのですが、シェーンベルク自身による台本は、サービスでついているわけではなく、このDVDの鑑賞のための資料です。基本的にはト書きを淡々と忠実に映像化していること、一方で台本をどのように解釈して映像化しているか、など、監督の意図を考える楽しみが持てます。
口パクのオペラ映画でこれだけ緊張感を出すのは凄いな、と思いながら観終わってから解説を読むと、野外劇場での撮影と同時録音で歌を収録しているとのこと。1974年制作としては驚くべきことではないでしょうか。
かといって、ライブの一回性に頼りきるのでなく、静止を多用してオーケストラに語らせる作りこみも緊張感があります。凄い音楽映画です。
音楽史に残る偉業
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ストローブ=ユイレというと画面が動かない退屈なものをイメージしてしまうが、オペラ映画では、全くそういうことがない。なぜなら画がなくてもそれだけで十分鑑賞に耐える音楽とドラマが既にあるからだ。そして画面が動かないという特性はここではむしろプラスになり、他のオペラ映画にある画面が始終変わって音楽に集中できないという欠点がなくなるのである。
これはそれ以前に、そしてそれ以後に作られたどのオペラ映画とも違う全く独自のものである。(唯一例外は、同じストローブ=ユイレが作った「昨日から明日へ」だけだ。)
そしてこの映画には、録音や実演ではまずお目にかかれない、シェーンベルクが音楽をつけれなかった第3幕が含まれている。これにより物語が真に理解できるのである。