ケータイ小説みたい
★★☆☆☆
結婚も仕事も恋愛も友達も親も子供もルーティンワークだと見下す一方で、そんなルーティンさえできずにいる主人公の苫子。
人の首の後ろにあるスイッチを押せばその人はいなくなると空想し、スイッチを探す苫子。
不定休で八時間労働の清掃のバイトをはじめ、少し前まで一番なりたくなかった人種に自分がなっていて、自分がそう見ていたように、人に白い目で見られているのかと思うとゾっとする苫子。
古着のほつれやスカートのシミやタイツの穴が気になり、世の中全員が自分のことをバカにしていると感じ、個人のスイッチではなく、根本のブレーカーを落として、みんなといっしょに自分も消えたときに初めて、世間ズレした自分がみんなと同じになれると思う苫子。
こんな苫子に最後までまったく共感できず、「ふーん」と思いながら読み終えました。
日本ラブストーリー大賞の審査員絶賛賞を受賞したということですが、「これが?絶賛?」というのが正直な感想です。
内容以外では、「何か生きがいとか、あるのかな・・・」というふうに、「・・・」(中黒×3)をやたら使っているのが気になりました。
一般的に小説というか文章で使うのは、「…」(三点リーダ)の二倍使い「……」(二倍三点リーダ」だと思っていたので、かなりの違和感がありました。
ケータイ小説だったのか?と思って帯や裏表紙を見直しましたが、そうではなかったようです。
雫井脩介のケータイ小説、「クローズド・ノート」でガッカリした人(これ私のことです)や、日常的に小説を読む人にはあまりオススメできません。
ふだん小説を読まない人やケータイ小説を楽しめる人たち向けのような気がします。
苫子は思春期における人間の普遍的な姿
★★★★★
悩んだり傷ついたりするのは、何も若者だけではない。
この主人公の姿に、過ぎ去った青春時代の自分を見つける人も多いに違いない。
巻末で映画関係の人間が、いまいちピント来ないと言っていたけど、映像にしたら
この本は台無しになると思う。
コケ子じゃないのよ
★★★★☆
スキマや彼女やスケットダンスとは関係なくて
宇野亜喜良の退廃的カバーに鈴木あみの推薦帯…第一回ラブストーリー大賞受賞のあおり…柴門ふみのこんな主人公が書きたいの解説…
統一感がないなぃと思いつつ気を引かれ読んだら結構おもろかったです
地の文がうまいから、二十六歳トイレの掃除婦 彼氏なしの主人公が厭味にならんのかな
林真理子っぽい文章だけど、なんか一発屋な匂いがプンプン
でも原田マハよりはいいかんじ微妙にお勧め
痛いほど共感できる。でも…
★★★★☆
努力はすれども結果が全然ついて来ない現実に対する苛立ちを、人物の仕草・心理描写で表現している作者のセンスは良いなと思います。
僕自身、人付き合いが苦手なので主人公の考えは凄く共感できました。
学習しようとしても、途中で気持ちが落ちて思考停止してしまうところは読んでいて
胸がチクリとしました。
ただ、ラストはもう少し救いが欲しかったです。
結局、主人公が抱えている問題はほとんど解決できている風には思えなかったので…。
(人との係わり合いが増えただけでも良かったのかもしれませんけど)
見事な傑作!
★★★★★
どこかに「自分は特別なんだ」と云う、
根拠の無い思い込みを抱く現代の若者が、
しかし勤労社会に受け入れられずに
自我像とのギャップに苦しむ心情を
見事なまでに掬い上げた傑作。
じたばたと足掻く無様な姿は見せられず
かといって地道な努力はカッコ悪く、
結局拗ねるか何かに没頭するか、
心のスイッチを切るしかない状況を
諦念に近いユーモラスな筆致で
描き出すテクニックも見事。
構成と言う意味で予定調和が多すぎる、という意見も多いが、
格差社会をルポの延長ではなく、小説として
成長物語に昇華させている点は高い評価に値する。