アメリカのプリミティブ・ブラックメタルバンド、ウルブズ・イン・ザ・スローン・ルームのアルバム。
ワシントン州オリンピアの3人組で、一言で言うとネイチャー・ブラックメタルともいうべきサウンド。
実際に山林の中で暮らしたりしていたらしいが、まるで森の空気をそのまま切り取ってきたような
風や鳥の鳴き声の入ったイントロからして普通じゃない。美しいシンセが鳴るゆったりとしたインストから、
2曲めに入るとブラックメタルらしくわめき声入りで疾走開始。しかしブラックといっても彼らの場合は、
決して地獄やサタンをテーマにしているというわけでもなく、むしろ自然への畏怖、そして調和こそを
音楽で表現しているように感じられる。雰囲気しはてはEMPERORの1stあたりに通じるが、
そこまでの暗黒世界ではなく、こもり気味の音質も手伝ってか耳に馴染みのいいサウンドなのだ。
全4曲で43分という、曲ごとは長尺であるのだが、空気を楽しむように聴けば気にならない。
森と土の匂いのする不思議なブラックメタル。神秘的な女性ヴォーカルもいいいアクセントだ。

各方面から言われている通り、USプリミティブ・ブラックというカテゴリーになるだろう。しかし、USプリミティブ・ブラック代表のザスターとは決定的に違うところがある。それは聞いていても疲労感が全くないところ。ギターサウンド、ドラム、ノイズどれをとっても音に不快感が無いのだ。
それもそのはず、バンドの意向が、ブラック由来のネガティブ感情を抑制したブラックをプレイするというものなのである。
面白いことに、ブルザムと類似点がある。音もそうなのだが、特に歌詞の世界観である。嫌世的なところは違うものの、独自の哲学を打ち出しているところである。それにブルザムも本バンドも自らがブラックメタルであることに対して否定的なのである。
プリミティブというが、音はそれ程悪くない。曲は長尺で10分ぐらいが平均で、長いものなら20分程度。曲の展開が沢山あるので気にならないと思う。
ギターがとっても壮大で、人気の無い森にいる気分になる。結構前衛的で女性ヴォーカルを入れるなどしている。
日本版にはボーナスディスクがつくのだが、それにはセカンドデモが丸ごと収録されています。3曲で50分を超えるというオーペスもびっくりな大作であります。音質はこのアルバムには劣るが、聞けないことはなく、良曲である。値段は張りますが日本版を薦