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男の民俗学〈1〉職人編 (小学館文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 小学館
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職人たちの姿 ★★★☆☆
 著者は独自の活動を続ける民俗学者。けっこう癖があるので、好き嫌いは分かれるかも知れない。
 本書は、1980-89年に『ビッグコミックオリジナル』に連載された「男の民俗学」シリーズをまとめたもの。もともと『男の民俗学』(1985年)、『日本の匠たち』(1989年)と二冊の単行本にまとめられていたのだが、全三冊で小学館文庫に再編集して収められることになった。ちなみに、2巻は「山野編」、3巻は「大漁編」。
 本書で取り上げられているのは、花火師、猿まわし、万年筆職人、飴職人など37のテーマ/職人。文書と絵で、それぞれの仕事、ポイント、つらさや楽しさが紹介されていく。けっこう珍しいものも含まれており、その仕事ぶりを垣間見させてくれる本書は貴重な存在だと思う。
失われゆく昭和の男たちの姿 ★★★★★
「昭和の男たちは自信と誇りに満ちていた 消えゆく日本の貴重な『技』を伝える”聞き書き”シリーズ第1弾」と帯にあるように、職人的職業の紹介は雑誌掲載時の意図とは違って、今ではほとんど民俗学レベルにまで貴重なものになってしまったのだった。この本では、花火師伝、焼きイモ屋伝、刺青師伝(全身に彫るには10年かかるとか)、万年筆職人伝、飴職人伝、闘犬伝、人体標本職人伝、ビードロ職人伝などなど37人の無名の匠たちの技を緻密かつ大胆な素晴らしい絵と文章と味のある文章で伝えている。ひとりひとりの職人のこだわりには、ひたすら脱帽するしかないほどだ。「日本で最後の~」という職業ばかりなので、現在では存在しない仕事も多いだろう。

子供の遊びを紹介した本など、とことん「手作り」「職人技」ということにこだわる作者であるが、生活のすべてが自給自足で、生活の中で使うものはすべて自分で作るそうである(大きな丸太をボルトでしめて作った囲炉裏、ドラム缶を切り溶接して作ったストーブ、孟宗竹で作った大根おろしなどなど)。トイレもなく、用を足すときにはスコップを持って山に入るのだそうだ。ここまで徹底して自立した生活を送っている人もなかなかいないだろう。自分の力だけで生きていく、そんな逞しさを私たちのほとんどはかなり失ってしまっている。

せっかくの文庫化なのでその画才と着眼点に圧倒されるべし。