男の子は外で男になる。
★★★★★
「岳」少年はとてもかっこいい。
勉強はいまいちだけど、喧嘩は学年一強い。
ぼうず頭で、釣りに夢中。釣りのことなら父親の教師になってしまう。
バレンタインには、朝早く何人もの女の子がチョコを持ってやってくるが、興奮する父親に「はいはい、よかったね。」といいまた眠ってしまう。
外で真っ黒になって走り回る少年。イタズラも殴りあいもする少年。自然に鍛えられていく岳。
あーかっこいい!!
私も5歳になる男の子がいますが、とてもこんなふうに温かく口を出さず見守ることができません。
近所の公園でも一人で遊びに行くのも心配して、ついていってしまいます。
でも、男の子は自然と目一杯触れ合うことで男になるんだと思う。
軽く笑いながら読めるのに、自分の子育てを見つめなおすことができるおすすめの一冊。
シーナさん作品ナンバー1
★★★★★
20年ぶりに読み返してみました。やっぱり素敵です。20年で随分スレた大人になってしまった私ですが、この本を読むと今でも優しい笑みがこぼれます。我が子を見守る優しい目線の「おとう」椎名さん。結婚相手は良いダンナになる人より、良いお父さんになる人がいいな、と思ったものでした。
今の時代、こんなに子供らしい子供って生き残っているのかな……。
父と息子は真横に並んで
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30歳過ぎてから、年々夏らしい事と遠ざかっているような気がする。
その点椎名家のガク少年は全身で夏を浴びまくっている。
今さら自分の体力的に真似るのは無理なのだが、やっぱりちょっぴり羨ましい。
なので夏を感じたくなる度に文庫本引っ張り出す。
バカちんまるだし男子だった頃の自分がページの端で鼻をほじりだす。
日の出と同時に起き出し、もちろん日中は汗みどろで遊び倒すガク少年やミッタントッタン。
晩飯食ってからも夜空の下で、寝る直前まで動いている。
そんな少年たちの憧れの大人、カヌイーストの野田さん。に、較べて点でだらしない椎名おとう。
親から子へ。上から下へだったりした関係が。子から親へ。1人と1人。横に並んで話す関係になる。
そんな事が書かれているのが好きだ。最後2人で宿に泊まって釣りをしに行く話に、
肩肘はらない親子の姿を感じる。児童文学の古典だと思います。
重松清【日曜日の夕刊】の中の傑作短編【サマーキャンプへようこそ】も併せてどうぞ!!
「元・男の子」から「次期・大人の男」へのラブレター
★★★★☆
この物語は、父から息子への熱烈なラブレターだ。
最近(と言っても20年も前だけれど)の親の過保護っぷり、それに伴なう子どもの軟弱さや狡猾さへの批判、なんていう深読みはせず、ただただ「我が子ながら、けっこういい少年だよなあと思う」というメッセージに耳を傾けて欲しい。
こんな育てられ方をしたら、愛をまっすぐ受け止めたり、贈ったりできる「けっこういい大人」になれるんだろなあ。
中学受験の思い出に
★★★★☆
一定の年齢以上の人なら、この本を読むと中学受験の国語の長文を思い出すと思います(今はどうか分かりませんが)。特に、麻布や武蔵・栄光などの記述中心の学校対策を標榜していた模試を受けたことが一回でもあるなら、85-90年前後の試験では頻出の文章でした。
岳物語・続岳物語を読むと、どんなにぶっとんだ子どもなのかと想像をめぐらせることとなりますが、(とりあえずラー油たっぷり餃子やカヌー・喧嘩修業をする少年のくだりから、私の周囲にはいない雰囲気の子どもだと思っていました)後年、作者のどこかの文章で岳少年のその後の人生を目にして「なるほどこういう子どもはこういう生き方を選んでいくのか」と感心しました(否定的な意味ではなく、素直に”自分とは違う人生だな”と感動したのです)。
懐かしさを感じる方のみならず、小学校高学年の子供さんから親御さんまで、ご一読をお奨めします。