みんなほんとは打たれ弱い
★★★★★
ストレスが心身の健康を蝕む。そのストレスの一番は人間関係。自分が打たれ弱いから強く見える人や識者たちはどうやって乗り切っているか知りたくて読みました。そしたら城山さん自身「弱い」といっていました。嬉しくなりました。城山さんは文の中には書いてありませんが彼の知己である名だたる経済人たちや歴史上の人物の生き様を多く知ることで彼らから沢山の胆力・知力・行動力などを学び、自分の血肉としていくことで少しずつ打たれ強くなるんだと一読者として理解しました。実際の場面での城山さんは毅然として揺るがない、まさに打たれ強いイメージですが、それも長年の経験と弛まぬ努力、学び力、真摯な生き方、そして発想の転換と行動力なんですね。
この世界は不平等
★★★★☆
打たれ強い、ということはストレスが溢れるいつの世も求められる資質なのかもしれません。エッセーの中の一部にこのテーマについて語られている部分がありますが、それ以外は左遷や歴史、城山三郎氏の各分野の知人・友人の話などで多様な内容の構成になっています。
面白かったのは、演劇浅利慶太氏の「この世界は不平等と思え」「自分の時計を持て」。そもそもこの世は不平等なのだから、自分のペースで歩いていけば良い。また、城山氏自身は「肉親を愛し、よき友人を持ち、よき趣味をもち文学や芸術を通して自分だけの世界をも豊かにしておくことである。このことが打たれ強さにつながる。」と言い、仕事だけの世界に埋没してしまうことのアンバランスを諌めています。
軽妙な中にも含蓄ある言葉多いエッセー集だと思います。
城山さんの考え方がよくわかる
★★★★★
多くの経済小説を書いている城山さんの考え方のベースが良く分かる本です。多くの経済人を取材したり観察した結果を小説化するのでしょうが、城山さんが小説化する人物のどのような発言や言動に重きを置いているのかが分かります。短編のエッセイ集の感覚で読めますし、なるほどと思わせる章も多いので、出張などでの新幹線の中で読むのには適しているかもしれませんね。
さわやかで含蓄の深いエッセイ集
★★★★★
本書は、日経流通新聞に連載されたエッセイがもとになっている。エッセイの数は71あり、全体のトーンは表題よりむしろ著者の引用しているワルラスの「静かに行くものは健やかに行く。健やかに行くものは遠くまで行く」という感がした。山種証券の創設者山崎種二氏の「大きな耳」からはじまり、福田総理の電話の話もあれば、レオナルド熊の話もある。毛利元就を引き合いに「大望があれば、勢いにのって破竹の進撃と行きたいところだが、それよりも、目前のひとつひとつの戦いをていねいに戦い終える」ことを説く。そうかと思うとスーパーの駐車場に傍若無人に車を止めた店員を引き合いにマニュアル教育の欠陥を批判している。著者の人生の知恵が詰まっており、時々読み返したいと思った。