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破産者たちの中世 (日本史リブレット)

価格: ¥840
カテゴリ: 単行本
ブランド: 山川出版社
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中世の面白さを満喫 ★★★★☆
 歴史の中でどの時代が面白いかといわれれば、私は中世です。幕末には、ドラマのような面白さがある。古代には、実証資料が乏しいゆえのロマンがある。中世には、剥きだしの人間の欲望がある。中世って日本人が現代に通じる合理性を持ち始めた時期だと思うんです。特に室町時代。人間の価値観が劇的に変化し、一人の人間の行動範囲が飛躍的に広がる時代だと思う。タイトルをみるとは破産者がテーマのように見えるが本書で扱われている真のテーマは金融である。現代に通じる金融の萌芽がここで見られる。もしかしたらもっと古くから行われていたのかもしれないのだが、資料で確認できるのがこの時代なのだ。著者の我田引水ぶりが気になるが、もともと資料が少ないので仕方がない。推定こそが中世の面白い部分なのだから。与えられている事実からは他の推定も十分成り立つはずだ。推定の部分は推定であることが、はっきり明示れており好感を持った。著者と違う結論を持てるのもこうしたことが、徹底されているからだと思う。反論を受け入れる余地を残しているのだ。
 100ページほどの薄い本なのでらくらく読めると高をくくっていたが、意外と高度な内容でてこずってしまった。訴訟記録を元に再構成しているため、20年も前に受けた法学部の授業を思い出すような内容の本だった。
15世紀のしたたかな借主に対する、貸金業者のしたたかな始末 ★★★☆☆
15世紀前期(室町時代、6代将軍義教の御世)に実際起きた貸金返還訴訟の史料をもとに、当時の債務不履行案件の処理ルールを解き明かしていく本。

訴えられた借主は、先代将軍の引き立てで経済的地位を向上させたが、治世が代わると将軍家に冷遇され経済的地位も庇護も喪い、貸金返還訴訟の攻勢に曝されるようになった人。いわば「時の人」。「ただの人」ではないばっかりに、訴訟の場での言い逃れも一筋縄ではない。
一方、貸主も「時の人」のご入用に合わせて銭を用意してきた専門的な金貸し業者(土倉酒屋)だから、したたかで、借主を一気に追い込むような手荒なことはせず、デフォルトの危険がある貸金債権をより高度に貸金債権を集積している業者へ売却したり、借主の支配地からの収入を時限つきで優先的に受領する権利を獲得したりして、自身の貸金債権の回収に励むのである。
時は流れ、借主が再び多額の資金調達に成功したことを示す史料も残っている。著者は、これを、借主は先年の破たん処理の裁決に従って借財を弁済し、再び信用力を回復してきたことを示すもの、と説明している。借主もまた、したたかで粘り強い、中世の人なのであった。

私個人的には、6代将軍義教が借主の苦しい弁明の矛盾を厳しく指摘してこれを退け、貸主の弁に沿った事実認定をしていくくだりが、快事に思えました。

100ページ足らずの「リブレット」だけで終わらせるには惜しいテーマです。
叢書・選書レベルで、専門的にならない程度で深く掘り下げた著書を期待したいです。