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夜明け前 第二部(上) (岩波文庫)

価格: ¥798
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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レ・ミゼラブルを想起させる構成 ★★★★★
第一部の終わり、大政奉還という時代の変り目を、主人公は希望に燃えて迎えます。そして始まる第二部は長いハリスの手紙の引用から始まり、この長い引用は主人公のその先をすぐにも知りたい読者としては
冗長に感じられるかもしれません。しかしこういった史実や記録の挿入が、主人公の歴史的、地理的、社会的な位置を理解する上に深みを加えてもくれます。この書き方に、もちろん描こうとされたことは違うのでしょうが、フランス革命を背景として書かれたユーゴーの大作レ・ミゼラブルを思い起こさせられました。この作品のそんな類似を最も感じさせるのがこの第二部の前半ではないでしょうか。

期待で幕を開けた改革は、その進行に伴って主人公の期待とは違う展開を見せていきます。第一部で改革の夜明けの薄明かりに希望を感じたものの、さらに明るさが増して見えてきたのは綺麗なものばかりではなかった。第二部下巻の哀しい最後を予感させる不安が感じられる巻です。

旅の留守中に村民が一揆に参加した様子なので、帰って懇意な百姓を呼んで事情を聞いても「誰もお前様に本当のことを言うものがあらか。」と言われ主人公は「上に立つ」ものであることのさみしさを感じます。この挿話などは、上下関係の壁は何時の時代でも、きっとどこの国にでもあるのではないか、と改めて感じさせます。100年以上も経っているのに、人はあまり変わってなどいないかもしれません。