ここで気付く山崎の音は、刺激的だったり柔らかだったり、七色に変化する空気感。それは彼のギターと声のたった二つで描かれる。
元々アコースティックギターの創る音の空間というのは、他の弦楽器より丸く柔らかい。日曜昼下がりにFMから流れてきて、心地よい効果をもたらす。山崎は、その効用をコントロールする音作りがうまいなあ、と感じさせられる。他にもギターで同じ効果を狙う歌手はいるが、問題はそれに交わるための声。彼らの素人唄いと比べ、山崎の声というのは、そのギター音にムリなく乗っかり、非常に柔らかく調和するし、声に芯もあり正直歌も上手い。
⑥で山崎のギターがみせた世界は“空間の広さ”。どんどん地平線の向こうまで続くような。⑦は難しい曲調で情熱的かつクール。楽器同士のグルーヴ感が最高。⑧などこの辺りは、前半のいかにも昼下がりです、ではなくサイケデリックな世界観をみせる。この抽象世界が一層カッコイイ。⑨はピアノソロもありグルーヴ感に溢れる。⑩の名曲中の名曲で一息ついた後(シングルで別にレビュー。)、作品は⑪で最後のパーティの盛り上がりをレトロにみせる。後半の流れの集大成。⑫タイトルナンバーはどちらかというと前半の曲調。HOME、という響きは「家」だけでなく、人間形成の大元であり、山崎の根本を示すのではないか。つまり今作様々な曲調をみせたが、アルバムというのが一個のHOMEであり、そこには彼の全部の根本的な引き出しが揃っている。それを今回、家にリスナーをまねくように、おしみなく様々な部屋をみせてくれた、そんな気がする。