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退廃姉妹 (文春文庫)

価格: ¥1
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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けなげでしたたかな女性に支えられていた昭和史の一側面 ★★★★★
島田雅彦を意識して読んだことがなかったが、ある意味こむづかしい作家、との印象を持っていた。
朝日新聞日曜版の書評で本作を知って、ちょっと自分の島田印象とは違った内容のようで、興味を持って買ってみた。

おもしろかったですねぇ。
すでにアメリカと戦争をしたことを知らない人が増えてきている状況では。。。知識としては知っても、その教科書のアメリカと、目の前のアメリカと同じで、自分の曾祖父の時代には殺し合いをしたなどとはちょっとわからないかもしれない、
この小説の舞台は、なんだか外国の話しのように思えるかもしれない(多分40代より若いと)。
しかし、日本はアメリカ(そのほかの「自由」社会と)戦ったんだし、負けて、東京は焼け野原になったんだし。でも、そのことを知識以上にわかっているつもりの50代前半の私にも、その時代に生きた女性の生の生活までは想像していなかった。

なかなかきわものめいた表題と、ちょっとどきっとするような表紙画でいささか予断を持って読んでしまうのが欠点だ。しかし、内容的にはある意味すこぶるまじめで、そんな敗戦直後の日本の混乱の中で、したたかに、そして前向きに、でも苦しみ頑張って生きた、若い女性たちの懸命さが伝わってくる。
「性」を興味本位に取り上げたわけではなく、苦しい日本の状況で、何のことはないか弱き女性こそ、まず第一に立ち上がり、前向きに持っている武器を精一杯使って生きたんだと言うことが伝わってくる。
40代までのヒトには、なかなか敗戦直後の日本の様子を想像できないから、表面的に読んでしまうかな。表面的に読めば、単なる落ちぶれた姉妹の売春話し、となってしまい、それにはなんだかまじめな恋愛があったり、戦争の話しがあったり、何これ、となってしまうかもしれません。
でも、おもしろいです。とってもとってもいい小説です。

じっくり読もうにも、結構話しはだだだだだぁっと進んでしまいますが、とにかくいろんな意味で楽しめる、ほんと、いい小説でした。
おすすめします(ただ、表紙画はとってもすてきなんだけど、余りもなまめかしく、普段つけないカバーをつけて読んでましたがね)。
「真珠婦人」みたいな? ★★★☆☆
母にもらって読みました。こういっては何ですけどお昼のドラマのようなジェット
コースター型のメロドラマのようにしか感じられませんでした。

しかし、「これは昼ドラ」と頭を切り替えて「姉妹の父宮本=大和田信也」などと
勝手に配役して楽しむのもひとつの方法かとは思われます。

すっかり読み終わった後で、「これはもしや意図的にチープな描き方をしてテーマを
浮かび上がらせる手法だったのか?カズオイシグロ『わたしたちが孤児だったころ』
的な?」という疑念が浮かんだのですが、もしそうならその効果を読んでいる最中に
感じてみたかった。映画化には期待します。
一瞬 ★★★★☆
逆説的退廃てえ意味をも込めたタイトルか?とも思った。

内容は ここ数年の彼の著作の流れを汲むものといえるだろう。

個人的な感想としては「美徳姉妹」と言ってもいいくらいだ。

蛇足だが
同衾描写には 特筆すべき情感を見出すことができるだろう。
強きもの、汝の名は女なり ★★★★☆
戦後まもなく、占領下の日本。

美しい姉妹は家を守るため、そして自分らしく生きるため一人は愛する人にすべてをささげ、もう一人は自宅を宿として外人相手の売春婦として生きていく。

そこに、売春婦の斡旋を行っていた父が送り込んだ娘や、売春婦の女性などが絡みたくましく戦後を生きていく。



姉妹の生き方や時代背景に、当時の混乱や価値観がどんどん失われよりどころを失った男が呆然とし、女が毅然とするさまがよく現れているように感じた。

そしてきわめてひどい状況に生きていても、姉妹を含め女性たちは絶望もしなければ、動揺もさほどしていない、その芯の強い女性に対して男性のなんとい軟弱なことか・・・

この姉妹の生き方を否定できないし、この時代をこの状況で生きていたら私だったら姉と妹どっちの行き方をするだろう、と考えてみた。

妹かな???
女は雄々しく、男は女々しく ★★★★☆
カノン3部作、私も読んだが なかなかページが進まなかった。
魅力的なお膳立てはそろってるのに、なんか進まない。
でも、これは面白かった。
確かに戦後の悲惨さは伝わらないが、女性が変化に即順応し
いつの世も伸びやかに、逞しく生きるのに比べ
男性はなんと女々しく、後ろ向きに過去を引きずり生きているのかと
思ってしまう。昨日まで敵だった米軍に身体は売っても、心までは売らない。
汚されても、最後は帳尻合わせて、何喰わぬ顔で生きていく。姉妹のみならず
女性のしなやかさに拍手。