中国の怪異
★★★★★
昭和38年に青蛙房から出た単行本の復刊・文庫化。新仮名遣い、新字体に改められている。
著者はホトトギス社で編集に携わり、のち『子規全集』を編むなど俳句関係の仕事で知られた人物。一方で大量の古典籍・漢籍を読み漁っていたことでも有名で、そのなかから妖怪、怪異な現象などについてまとめたのが本書。
続編で取り上げられているのは、月の話、宿命、竜宮類話、虎の皮など64個の話題。原典をそのまま引用するのではなく、要点だけをまとめ、似たような話を比較して、簡単にコメントを加えるという形式。
正編に比べると、中国の話が多くなっている。自然と味わいも変化しており、彼我の怪異の違いを感じさせられる。
非常に多くの文献が使われており、すれっからしの妖怪ファンでも楽しめること請け合い。
上級者向けの本であり、かなり知識がないと、ちゃんと読めないと思う。
中国中心の続編も面白い!
★★★★★
続編のほうは中国の怪異話を中心にすえた構成になっている。「支那の志怪の書と日本の妖異譚との関係は、支那料理と日本料理のようである。」と述べる宵曲先生、その心は?「似ているようで違い、違うかと思えば似ている。」おーっと、ちなみに「支那」という言葉は、明治の文人にとっては「軽視のことばではなくて、尊敬と親愛の情を含めたことばである。」(青蛙房主人あとがき)なので、目くじらたてる早合点は禁物である。たしかにこの書を読んでいると、宵曲が中国の文化の精髄を楽しみながら、書いているのが伝わってくる。それにしても、畏るべき教養の深さだ。モーツァルトの極上の喜遊曲のような文体の妙!著者自身「由来続篇と銘打ったものに、面白いもののあったためしがない。」と言っているのに、のせられてはなりませんぞ。こんな言葉は自信のない人間には書けないのだから。そして、期待に違わず、この「続篇」も面白いのである。