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踏みはずす美術史 (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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面白い ★★★★★
私は美術や芸術に関してはまったくの素人だ。この本を読む前に芸術に関する本を読んだためしもない。だから、この本を読み終わった今、美術に開眼したとかいうつもりはないし、なにかを得たという感じもない。ちょっとだけ美術館に行きたくなった程度か。

しかし、この本はとても面白かったうえに、新しいことを学べた。それは、人文系学問との接点である。ポストモダン以降、多様性や差異が強調されてきた。つまり個人の独自性やオリジナリティに価値を置いてきたようなきがする。著者はそのような差異を強調するのではなく、むしろ類似性を共有することが重要であると考える。見知らぬ他者でも、自分との共通点を見つけると、なんとなく親近感がわくだろう。そのような親近感によって他者とつながれていく社会こそが重要なのではないか。ということを念頭において、地球美術史という概念を提唱する。このような考えは美術史や美術の世界に限らず、異文化理解にも十分有効な、そして斬新な視点であると思われる。

私の専門の人類学においても、ポストモダンによって文化や民族の差異や多様性を強調することがよくある。それは少数民族のアイデンティティや文化の保持のためにはやむをえないことである。しかし、同時に、そのような差異や多様性の強調は、他者との対立を招き、民族主義を強化してしまう可能性もある。だから、人としての共通点を認め合うことが、今の人類学の世界にも求められていることなのかもしれない。もちろん、そのような差異の隠蔽は、普遍化やグローバリゼーションなどを正当化してしまったり、集団の基準に合わない社会的弱者を疎外したりする危険性があることも無視できないのではある。このように、異文化理解は難しい問題であるため、どちらがいいとは言いがたい。しかし、少なくとも、芸術関係の人ではなくても、この本から、なにかを得ることはできると思うし、なによりも、人文系学問と芸術系学問との接点を知るのに適した本だと思う。
「似てはならない」ということからの開放 ★★★★☆
絵画の“コスプレ”で有名な現代美術作家の森村泰昌。そんな癖のあることをしている人だ
から、どんな妙ちきりんな美術の「踏み外し方」をするのだろうと恐る恐る本書を開けば、そこ
ではやさしい言葉で美術鑑賞の入門的内容が語られている。
彼は「美術をみる」ことだけに与えられた鑑賞の既存の「特権」をとらえなおし、美術に対
してあらゆる感覚を開放する。そうすれば、「モナ・リザ」のとらえかただって変わってくる。
「美術をみる」ことは美術をとらえることのなかでも、ほんの一握りの可能性でしかないことを、
彼は「美術を着る」ことで証明してみせるのだ。

ウォーホルから「ポップ・アート」という概念をとらえ返したり、彼の生い立ちをさかのぼりながら、
本来は彼の対象でしかないマリリン・モンローとを比較する第四章など、中盤もなかなか興味
深い内容。

19世紀から20世紀にかけての人類史は、個と個を「分断」する歴史だった。だれそれとだ
れそれは違う。誰にも「似ていない」ことが重要であり、その似てない部分の「差額」にこそ、
価値があると考えられ、焦点が当てられた。そしてそれが争いのもとともなった。

21世紀、もしかするとその個の時代、誰にも「似ない時代」は終わりを告げるのかもしれない。
終わらないにしても少しは、「似ていることの効用」、誰かと何かを同じくすることのよさが、
見直される時代になるのかもしれない。

思えばそれは、美学の根本的な命題、万人の本来異なる趣味をいかにしてまとめあげるか
という問題にも通ずるところがある。
相違点から共通点へ。
実はその問いに届く重要なオピニオンを、この本は発しているのかもしれない。
“戻ってこられる”美術史観 ★★★★★
タイトルだけ見ると「美術の見方を踏み外すのはどうなんだろう」とか、
あるいは「モナ・リザを真似してもねぇ」と思ってしまうかもしれない。
だが本書を読むと教科書的な見方がいかに美術鑑賞をつまらなくしているか、
逆に言えば通説と違った見方もよいのではないかと思えてくる。

著者は“入れ知恵”に惑わされず、自分の視点でモノを見るように説く。
美術作品と向き合い、ジックリ鑑賞し、自分のものにしてしまう。
それを「考えるな、食べろ、着こなせ」と表現している。
美術鑑賞も普段の生活の中にあるということなのだろう。

また「着こなせるのであれば模倣は是である」という考えにも共鳴できた。
そこから解釈が広がって、自分と他者のつながり、共通点を探し、
違いも読み取って理解を深めたいという大きな発想がユニークである。

最後にモナ・リザに関する章はいろいろと参考になった。
プラド美術館の模写の存在、視線のマジック、ポーズのとり方など、
言及されているようでされていない部分を実に巧みに見せている。
本書は単なる「異説」ではなく、これからの鑑賞に生かせる見方を提供している。
過激で面白い美術史 ★★★★★
この本は、よくありがちな難解な美術用語でなく、とてもやさしく分かりやすい言葉で書かれている。しかし内容は大胆で、過激な仮説が立てられていく様子が充分楽しめる。

この本を読めば、誰もが抽象絵画を面白いと思えてくるはずだ。モナリザの本当の謎とは。オリジナルがそんなに大事か、むしろコピーという行為にこそ次世代への可能性がある。また、格好いいアンディ・ウォーホールとマリリン・モンローに人生の悲しさを知るだろう。

美術を通して面白いだけでなく、いつのまにかとても深く世界や生き方との関わりについて触れられていることに気づく。

結構この「服」気にいっています! ★★★★★
美術の捉え方の転換、ひいてはものの捉え方の転換、「踏みはずし方」を実践をまじえながら解説してある本である。全体としては、その「踏み外し方」が写真のネガのようで、決して「外れきって」おらず、なるほどと納得できる仕掛けになっていて面白い。そして、本のなかでは、すでに存在する作品(他人)と自分の作品(自分)の「似ているところ探し」と「違い探し」が繰り返されているが、それは読者に自分探しの仕方をも提示しているようにも思える。着込んで(読み込んで)みると、裏地には気づかなかった刺繍が色々としてあり、ちょっと得した気分にしてくれる本である。