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若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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お一人を除いてあまりに評価が高いのでちょっと別な意見を ★★☆☆☆
一応冒頭で断っておくと、私は左寄りの書物についてもだいぶ多く触れてきていると思いますし、共感できるものもそれなりにあります。

この書物は政治にあまり関心のない人々に対して感情的なフックとして作用し、政治参加を促すきっかけになるかもしれません。それはきっとよいことなのだろうと思います。しかしながら、そうした利点があるとしても、これはちょっと問題ありだと思います。 著者は政権交代の主張といい手段を選ばないという面が少なからずあるのではないでしょうか。
というのも、ここで挙げられているネオコンやネオリベ批判はそれこそ紋切型のマスメディア的論調であることに気付きますが、それで高評価している方々も、メディアから入ってきた小泉云々といった言説をこの書物で再確認して納得してしまっているのではないかと思えてしまいます。敵が簡単に名指しできない時代に突入しつつある、あるいはしているということに意識が向かないと、それこそ危ういのではないでしょうか。
この書物で用いられているような友敵図式はナチスの御用学者といわれたカール・シュミットの理論です。これは政治的動員において強力ですし、常套手段なので利用したくなるのもわかります。しかし、強者に対する弱者の動員のためならそれを徹底的に用いてもいいのでしょうか。
あまりにもよく知られているように、ナチスは当時世界で最も民主的とまでいわれたヴァイマル共和国において、選挙によって合法的に権力を奪取しました。 そして、その際にユダヤ人は弱者として排斥されたのでしょうか。そうでありません。やはり彼らも金融業を仕切っている強者として排斥されたのです。それは本書でも触れられています。そうした事実を棚に上げ、自ら弱者の味方を標榜し友敵図式とは首を傾げざるをえません。
ステレオタイプの危険性と重要性を指摘しつつ、自らも極めてステレオタイプ化し易い友敵図式を多分に用いている上に、やれこの番組はいいだの主張してステレオタイプ形成を助長しています。結局免疫がないところに、ネオコン、ネオリベ、小泉、オリックス云々は悪だというステレオタイプを容易に生み出している、あるいは強化しているのではないでしょうか。それは、仮に彼らが本当に悪だったのだとしても、形式的にかなり問題があります。
露骨に矛盾しないように、ステレオタイプの重要性も主張されていますが、自分の言っていることは真実だから、そのステレオタイプは有用なのである。だから用いてもよい。それは都合のいいステレオタイプ形成を手段にするだれもが使う論理でしょう。拠り所はやはり安易な友敵図式です。そんな論理を使いながら、ステレオタイプに警鐘を鳴らすなんて噴飯ものです。少しはここでも丸山真男を見習っていただきたかった。
そうした友敵図式やステレオタイプを用いているので、内容自体はとても分かりやすいです。ただ、仲正昌樹ではありませんが、疑うといっていて、分かりやすさを疑わないのはなぜなのでしょうか。

著者は確かに若者に同情的である気はします。以前NHKで更に若者に対して同情的な勝間和代にやりくるめられていましたが、それでも著者の立場は理解できました。しかし、同情的であることや、なるべく適切な知識を授けることと、アジることは異なっているように思われます。
全く政治を知らない人のためになる. ★★★★★
私は現在31歳ですが,政治については全く分かっていませんでした.
ニュースや新聞は断片的な情報であるし,ドキュメンタリーなどを見る機会も少なかったです.右派・左派・自由主義などの単語すら分からず,構造改革で世間が騒いでいたときも「なんだそりゃ?」といった感じでした.
「政治をイチから勉強したい」という若者が,政治家の行動を理解する基盤を身につけるには絶好の本と思います.
私は今後のためにノートを作りながら読んだので,3回くらいじっくり読み,非常に時間がかかりました.
今後は,この本で得た知識をもとに,ニュースや本を読み,自分なりの政治の意見をもてるようになりたいと思います.

本書を読んで,私と同じように「投票は行って,政治が分かっているフリをしていますが,実は何も分かってません」という人が,政治を理解し,行動するきっかけになればと思います.
また,著者の山口先生にはこの場を借りてお礼を申し上げます.
至極真っ当 ★★★★☆
タイトル通り。本書はまさに、若者のための政治マニュアル。10のルールと題して説明がなさ
れる。
ただし本書が解説するのは、今国会で何が起こっているか、どのような政党があるかなど「テ
レビの中の政治」ではない。そうではなく僕たちにとって、投票する側にとっての政治とは、
民主主義とは本来どういうものなのか、ということだ。

シンプルで分かりやすい言葉で語れる一番の主張は、「声を上げろ」ということ。政治に参加
しろ、ということだ。民主主義の本義は、各事例に個々人が自分の利益に沿った意見を表明し、
時に対立するそれら意見の妥協点を見出すことなのだから、それは至極真っ当と言えよう。
その実践をすぐにできるようにか、本書のあとがきの後ろには、主要な政党と主要メディアの
連絡先、住所などが記載されている。かゆいところに手が届いている(?)。
社会保障の枠組みを壊し、優性劣敗の社会をつくりあげた新自由主義と自己責任の論理に
著者の批判は向けられるが、実はそのイデオロギーの独走には国民の、とくに若者の「選挙
権の放棄」とも呼べる政治への不参加にも責任があるということを指摘する。

先の民主党代表選挙で鳩山由紀夫が当選した。当選当初、かねてから氏が掲げる友愛という
抽象的な理念を一部メディアが批判的に取り上げられた。街頭インタビューでも、答える人みな
が、「現実を見ていない」「具体的に示してくれ」と文句を言っていた。
たしかに現実論は重要だ。しかし僕が思うに、政治家というのはなにがしかの理念を胸に政治
をするべきではないか。何か理念を持つことそれ自体がネガティブにとられるほど、選挙行動
を通して将来を期待することに、今や多くの人が諦念を抱いているのかもしれない。

「誰が大統領になっても同じ」とクールに決めてるそこの兄ちゃん、まず日本に大統領はおらんし、
それに投票する権利を「放棄」している君に、そんなことを言う資格はない。
まず選挙に行け。
当の"若者"としては ★★★★☆
ゆとり世代の知的レベルにチューニングされた内容なので、とてもよくわかりました!

意外に結構叩かれている本のようですが、
叩いている方ほどこの本が無くても 既に自分なりの政治観ができている人のようなので、安心しました。

僕はこういう本をあまり読まないので他との比較ができず、
「とりあえずそんなにはズレてないだろう。」 という感覚で読み始め、
また、 特に目立つ引っかかりもなく読み通せました。

なのでまだ自分の考えがない、僕(19歳)ぐらいの人が読めば、 今後政治について考えるときのとりあえずの視線の方向を 汲み取れると思います。

そこから先は自己修正していくとして、 まず始めの第一歩として、この本を読むことは無駄ではないと思います。

作者の偏った考えが書かれている、みたいなレビューもありますが、
それなら余計に、ただひたすら中立であるだけのものよりは、
自分で疑問を発見しやすいし、あるいは鵜呑みにしてある程度突っ走るための 原動力にもなるのではないでしょうか?

僕と同じ年代の人が書店でこの本を手にとって、 ちょっと読みたいなと思いつつ、
評価を確認しとこう、みたいになって携帯から このレビュー欄にたどり着いたとき、


『とりあえず読んで損はない!』


ということを伝えるためにこのレビューを書きました。

たった200Pなので、1日あれば読めます。
難しい本をいきなり読む前にぜひ一度読んでみてください。


たとえ自分で何かを始めなくても 誰かが何かを始めたとき、
その人の主張する内容が自分の欲求と一致するものであれば その人の参加の呼びかけに答えることは 決して大それたことではない、ということ、
社会を安定した状態に保つ単一の絶対的な方法がない以上は
社会の状態を維持するためには政治の柔軟性が必要不可欠で、
政治は常に変革の積み重ねでなくてはならない、 またそのためには政治を動かす市民の参加がないと
権力がだんだん一つのものに集約されていき、 社会はますますヒドくなってしまう、 といったことが学べると思います。


ただこの本は、肝心の、 「本気で政治に無関心な若者」 には何も届けられない本だと思います。

これが星を4つに留めた理由でもあるのですが、 つまり、この本で若者は
"政治への興味がないわけではないが、 彼を取り巻く現状によってその興味を発散できないでいる若者" と仮定されていて、

そんな若者に向けて、
"どこから手をつければいいのか"
が説かれているわけですが、
よくよく考えてみれば、そんな若者は この本に書かれている投票率の低さを見ればわかるように
若者という括りの中ではもはやマイノリティなのです。

投票に行かない若者がみんな、 この本に"啓発されることができる"ような若者なのではないのです。

自分の権利なんてよくわからないし、 よくわからなくても実際通用してるじゃないか、 という人がたくさんいるんです。


その人たちにこの本の内容はひとつも響かないと思います。
それがこの本の欠点で、この欠点はこの本が実際、
「政治にほんのり興味がある若者のための政治マニュアル」
以上のものではない、ということを示しているようです。


ただ勘違いしないでほしいのは、
その「ほんのり」は意識するかしないかぐらいの、
ほとんど無意識的な興味も含んでいるということです。

なのでこの本を読んだきっかけで政治に興味を持つ人は確実にいるし、
その数は決して少なくないはずです。
少なくともこのタイトルにぐっと来る人は読んで間違いないでしょう。
消沈する時代にあって注目すべき主張 ★★★★☆
新自由主義下にあっても経済が崩壊し、沈滞するこの時代にようやく著者の主張が説得力を持つようになってきたのではあるまいか。理想主義的である戦後民主主義というか社会民主主義が笑い話レベルに零落し続けていたこの20年、著者は数少ない、質の高い議論を提示し続けるイデオローグだった。本書には著者の長年論じてきた考えが、最近のトピックと共に、分かりやすい言葉で書かれている。

「政治家は知性より情熱」という言葉の中で、「予算の裏付けがないから駄目より、財源の当てはないが大きな目標を持つ方が正しい政治家。財源の算段なんて官僚が考えればいいんだ」という力強さに「なるほど」と感じてしまった。ほかにも「権利は請求・行使し続けないと意味がない」、「無責任でいいじゃないか」という言葉。「努力すれば報われる」新自由主義的改革のモットーは正しいようだが、努力できない人もいる、努力しても埋まらない差がある、底辺にある人は「努力が足りない自業自得」というレッテルが張られる。一人前の職業人になるまでにかなりの手間がかかるがそれを「即戦力」の名の下に社会が許容しなくなってきた、つまり若者を使い捨てにする土壌になっていると著者は言う。

個人的には、著者の考えに賛同できるのは全体の6割程度。鈴木宗男や無駄な公共事業を賛美するのはどうかねえと思ったし、イラク人質事件の主張は失当だと思う。しかし、著者の言葉の力強さには感心する所が多い。