長寿のための健康なのか?
★★★★☆
医師会に所属しない戦中派の医師が、医学界のお粗末を痛烈にぶった切る一書。惨澹たる医学部の教育や、「医療」の定義も無しに進められる不毛の議論、あたかも早期治療が万能かのように喧伝されるガン治療、いわゆる「健康馬鹿」等を医師の目から激しく批判する。「治らないものは治らない」という、一見身も蓋もない言葉に象徴される著者の主張は、誠実に患者と向き合って医業を営んできた著者だからこそ掴みえた達眼に裏打ちされており、傾聴に値する。読者の医療や健康に対する「定見」も根底から覆されるだろう。本来「医は仁術」のはずなのだが、今日のあらゆる状況が医師の志を毒し、患者との真の交流を阻んでいるようである。本書を読むと、死病に侵されても痛み止めだけをもらって自宅で「トンコロリ」と逝きたい気持ちになってくる。