世にも稀なる「あとがき集」は、予想以上におもしろい!
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当初、帯の「読者への恋文」という惹句がひっかかったのだが、本書を通読して、これはまさしく「読者への恋文集」にほかならないと思った。
編者によるあとがきにもあるように、自作の小説に長々とあとがきを書いて「解説」する人は稀だろうが、その真意は結局のところ「自分の考えを伝えたい」という一心だろう。
あとがきの形式をそろえることで、それを通読すれば時代背景と自己の想いをたどれるように仕掛けた加藤周一もすごいが、その真意を汲み取って没後1年もたたないうちに(そして「加藤周一自選集」発売のタイミングに合わせたかのように)本として上梓した周りもすごいと思う。幸福な「売文家」(生前の加藤氏は自らをしばしば「売文業」と称していた)だったといえよう。