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クリオの顔―歴史随想集 (岩波文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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女神クリオの微笑みをうける者 ★★★★★
マッカーシズムによって自殺に追い込まれた悲劇の外交官兼歴史家であるノーマンの手記。
今読んでも歴史観について教訓を得られる文言が多い。

歴史の女神クリオは気侭でいたずら好き。但し、うぬぼれ思い上がった者に対してやりこ
めてしまう。デマゴーグの多い研究者は、果たしてクリオに回答が出来たのか?今読んでも
ノーマンの歴史観には錆び付いたものはない。寧ろ、現在だからこそ、噛み締めて読む必要
があるのではないか?

偏見に溢れ、デマゴークに塗れ、そして歴史ファンをアジるだけの文筆家がノーマンの論集
を正視できるのか、見てみたい気はする。
クリオの微笑み ★★★☆☆
GHQによる占領期、ノーマンの講演と雑誌『世界』や『思想』などに発表した論稿6編に「クリオの苑に立って」の序文を加え、初めは1955年に新書版として出版されたものである。ノーマンはその後、1957年にエジプトで自ら命を絶つことになる。本文庫版には戦前から交遊のあった丸山真男氏の追悼文が採録されている。

ノーマンがマッカーシズムの犠牲者か、それともコミンテルンの工作員であったのか?
それはさて置き、虚心坦懐に読んでみた。本随筆集は歴史を司るミューズ、クリオに捧げられている。6編の中で特に「イギリス封建制に関する若干の考察」と「ジョン・オーブリ−近代伝記文学の先駆者」は、さすが、ケンブリッジ=ハーバード出身の学者だけあって古典教養に裏付けられた格調の高い興味深い論考となっている。大変、勉強になった。但し、特に前者については、小生の不勉強のせいもあるが、日本語としてわかり難い表現が多いのは残念である。
慶応大学で1948年に行われた講演「説得か暴力か−現代社会における自由な言論の問題」はどうか? 例を挙げて法治主義の概念、言論の自由、そして民主主義、具体的には自主政治の大切さを説いている。しかし、当時はGHQの占領下、“閉ざされた言語空間”のなかにあって、ノーマンがGHQの一員として戦後憲法の成立にも関与していたことを知る現在、講演内容には少々疑問符が付く。

クリオは控え目で内気なミューズだそうである。一方、クリオはちょっとしたいたずらが好きなミューズだそうである。もしかしたら、今になって、物陰でクリオはいたずらっぽい笑みを浮かべているかも知れない。
昨今の歴史論争を示唆しているよう ★★★★★
短編集なので非常に読みやすい。
訳もスムーズでよい。

そして、昨今の歴史論争にたいして何か示唆しているように感じられた。
例えば

「そして逆説めいて聞こえるがおそらく最もむずかしいのは現代史の解釈であろう(「クリオの顔」p67)」

「自国の国の過去に対する正しい認識はその国民の団結と力とを維持するために欠くことのできない要素である。それは戦争のような非常のときにおいてはこれを克服し、平時においても自国の文化と業績に誇りを持った勤勉な国民たるために真に必要な条件である。逆に、誤って、ないしはゆがめて伝えられた歴史は、たとえ短いあいだはそれと気づかれなくとも、結局において国運衰退の原因となりうるものである。(「クリオの顔」p81)」

この直前に、重要なのは教師とも述べているし。


まあ歴史論争とは関係なくとも、読む価値は十分にあるだろう。非常に薄いし。
良心的歴史家 ★★★★☆
 カナダの駐日大使を務め、歴史家としても知られたノーマンの代表的論考を集めた一冊。別に全集も出ているが、手軽に、なおかつ飽きずに読むにはこちを手に取るべきだろう。クリオとは歴史の女神。女神たちの中でもっとも恥ずかしがりやで、その顔を見ることは大変に難しいとされている。

 本書には「説得か暴力か」「歴史の効用と楽しみ」など7篇に加え、マッカーシズムのあおりを受けて自殺したノーマンを悼む丸山真男の文章も収められている。

 ノーマンは生真面目な歴史家であった。自由とは何か、歴史を学ぶこととは何かを常に追求している。そして、その成果を現代社会に還元しようと、努力を惜しまないのである。そして現実社会から隔絶してしまった歴史家への厳しい批判を繰り返している。

 現代の歴史家にも、本書を読んでもう一度原点に立ち返って欲しい。と思うと同時に、既に50年前から歴史家の堕落は始まっていたことには、「歴史家の本質か」とも考えさせられる。
 ジョン・オーブリ論考が収められていることでも貴重。

歴史は複雑なものだ ★★★★★
マッカーシズムの渦中で非業の死を遂げた歴史家ハーバート・ノーマンのエッセイ集。歴史学論から日本の「ええじゃないか」考まで、味わい深い作品が収められている。

ノーマンは幼い頃にアレクサンダー大王の“cut the Gordian knot”の話を聞いて失望したという。解けばアジアの王になれるという「ゴルディアスの結び目」、アレクサンダー大王はこの結び目を一刀のもとに切り捨てたということだが、ノーマンは、「代数学の問題を解くのに巻末の答えを見てからかかるようなものだ」と批判する。

このエピソードが物語るように、ノーマンは歴史学という微妙で複雑な学問を扱う際に、独断や独善・断定、また「歴史の審判」といった危うい考えを誰よりも警戒していた。もっとも内気で繊細で穏やかな歴史の女神クリオにささげられたという本書は、ノーマンの人柄をよく伝えるもので、鋭く温かく繊細な考察には、思わずわが身を省みさせる説得力がある。

「すぐれた歴史学者のあいだで証拠資料の解釈に食い違いがあるという事実は、もって歴塊??の複雑性に対するわれわれの認識を深め、われわれの歴史判断が独断的狂信的になるのを防ぐべき事柄である。」

「大言壮語によって不羈自由という神聖な言葉を汚すデマゴーグらは無謀にも何かの事件や前例をおのれの支えにしようとするが、その解釈を偽ることによって自らの正体を現わす」

以上は本書の一節。近年の日本では、国民の物語や「伝統」をフレームアップしなければ尊厳を保てない、物事に対する真の興味関心の欠落した、足元のふらついた脆弱なデマゴーグが目に障るが、本書は歴史を学ぶ者に歴史の面白さ・奥深さと、学問的・政治的誠実さの何たるかを教えてくれる。

なお本書には、自死したノーマンを悼んだ丸山真男の追悼文が収録されているが、エピキュリアン・ノーマンの姿を哀惜の念をこめて回想した圧倒的名文。