相変わらずの面白さと暖かさ!
★★★★★
ハートフルな要素を含んだハーレムラブコメディ第三巻。相変わらずティッシュ箱を用いたくじにこだわる耀姫、割と壊れた一面を持つ広人、着エロ万歳なユキメなど登場人物たちは個性に溢れています。作品一の好青年、守宮のぶっ壊れた一面なども垣間見えており、ますます味わい深くなってもきました。
今回は、広人の後輩で、金狐一族の姫であるあやのという少女がメインのヒロインになります。幼いころに一目出会った時から、ずっと想い続けていた広人を婿に取ろうと彼に接触してくるあやの。新たな嫁候補と喜ぶねこがみさまですが、広人を「婿にする」という意味を理解してからは、彼を取られまいと鰹屋家の仲間とともに強引な手段に訴えてくる金狐一族と対立することに。婿になることを拒否し、今の暮らしを継続することを望む広人ですが、自分達妖しの存在のため、広人が経済的に困窮している様子を目の当たりにしたねこがみさまは、広人にとっての「幸せ」について、悩むことに。
親に逆らえず、自分を殺すように生きるあやの。援助されることを嫌い、早くひとり立ちしたいと強く望む広人。誰よりも前に進み、明確な夢を抱く生活科学部部長の涼子。霊感体質から奇異の目で見られ、敬遠されてきた広人を傍で見続けてきた幼馴染の美薫などなど、今回のテーマは、人が生きるうえで望む「幸せ」や「生き方」というものだと思います。テーマとしては、まさに王道そのもの。だからこそ、丁寧に作りこまれたこの作品が好きですね。「悲劇を経験しているからこそ、我が子に同じ道を歩ませたくはない。」親心ですね。人と妖しでは、根本的に寿命が違うのですから、必ず別離の時がきますしね。ただ、忘れてはいけないのは「個人の人生はその人自身のもの」ということです。親子であってもそれは同じ。どんなに目を背けたくなるような辛さにあっていても、決して代わってやることなど出来ない。だからこそ、自分で選び、自分で責任を取らなければならない「人生」には、価値があるのだと思いますね。未来を気にしすぎていては、今を見失ってしまうというのも考えさせられます。
ねこがみさまがかき集める嫁候補関連については主張が弱く、だらしない広人ですが、辛い境遇にいる人を前にしたときの彼は、とことん強さと優しさ、頼もしさを見せます。ハーレムラブコメものの主人公って、とことんだらしないやつが多いと思いますが、彼は一味違いますね。また、ハーレム成分とお笑い成分(くだらないのがよい)、家族もの成分が見事にマッチしてますね。ますます大好きなシリーズになりました。今後も期待して、星五つにさせてもらいます。